入試分析セミナー「医学部合格への道」実況中継(東京編・2017年7月17日実施)

「医学部合格への道」実況中継一覧
『医学部合格への道』実況中継(東京編・7/17) 『医学部合格への道』実況中継(大阪編・7/23) 『17年度入試分析と最新入試情報』実況中継(7/17)

2017年7月、東京、大阪の2会場で、SAPIX YOZEMI GROUP特別協賛による「医学部進学フォーラム2017」が開催され、その中のイベントとして「入試分析セミナー『医学部合格への道』」と題する代々木ゼミナール入試情報担当者による講演が行われました。

ここではその講演の内容を実況中継方式でお伝えします。

東京編 PART1「志・覚悟」

医学部合格には「志と覚悟」が不可欠

医学部合格には「志と覚悟」が不可欠

医学部合格のためには、「志と覚悟(心技体のココロ)」が何よりも大切ということの説明です。

左側の3つの項目は合格するまでの内容です。周囲の勧めや環境は「恵まれた」要素ですが、それに加えて、受験生自身の意志がとても大切です。「他人の命と健康を守りたい」という気持ちを、是非持って頂きたいと思います。また、「医学部合格」は至難の業ですので、乗り越える覚悟が必要です。

右側の3つの項目は合格してからの内容です。「2023年問題」への対応のため、例えば臨床実習も質・量ともにハードになっています。国家試験は、来年から問題数・日数が減りますが、合格が大変なのは変わりません。医学部合格はゴールではありません。医学は「日進月歩」です。その意識がないと務まりません。

 

「入学者受入方針(AP)の例」

「入学者受入方針(AP)の例」

前スライドの「志望理由」や「使命・責任」についての説明です。

各大学の「入学者受入方針(アドミッションポリシー)」を3つ挙げてみました。周囲の勧めや環境に加えて、
受験生本人にこのような志望理由を持って頂きたいと思います。保護者の方も、うまく誘導して頂きたいと思います。

千葉大学の「世のため人のために」などが、医師として大切な素養です。

 

センター試験の平均・最低得点率

センター試験の平均・最低得点率

前スライドの「高難易度・倍率」についての説明です。センター試験を例に挙げます。

医学部合格のために必要な点数は、国公立大学も、またセンター試験利用入試の私立大学も、おおよその目安は受験教科全体で90%です。

ですが、センター試験は実に手強い存在です。全受験生の平均点とはいえ、国語と数学の実状はグラフの通りです。この10年間で平均点が最も低かったのは、国語が約49%、数学ⅡBに至っては約39%という厳しい状況です。国語や数学、グラフにはありませんが地歴公民や英語・数学も含めて90%得点するのは、本当に難しいです。

センター試験で躓くと、志望校を受けられない、また医学部自体も受けられない、となってしまいます。センター試験は絶対に侮ってはいけませんね。

 

私立医学部の合格率(合格者/1次受験者)

私立医学部の合格率(合格者/1次受験者)

前スライドの「高難易度・倍率」についての説明です。私立大学の合格率を例に挙げます。

国公立の一般入試は2校までしか受験出来ず、またセンター試験の7科目も負担ですので、倍率には限りがあります。一方で私立は何校でも受験出来、また一般入試では英・数・理2が基本パターンで国公立と比較すると科目数が少ないため、倍率の高さ=合格率の低さは国公立とはケタ違いとなっています。

グラフではそれぞれ、合格率の「最も高い5大学」と「最も低い5大学」をリストアップしました。高い大学でも約15%や約11%にとどまっています。低い大学については2%にも満たず、「かつての司法試験なみ」の厳しさです。

 

日本の医学教育「国際基準」への対応

日本の医学教育「国際基準」への対応

前スライドの「臨床実習」など、日本の医学教育の国際化・国際基準への対応についての説明です。

配付いたしました冊子「医学部AtoZ」に掲載した奈良信雄先生(日本医学教育評価機構・常勤理事)のインタヴュー記事にもある通り、医学部教育の改革が進行中です。

臨床実習を例にとると、従来の「見学型」から「参加型」に変わっています。また、「早期化」「長期化」などもあわせて、質・量ともに拡充が図られています。

 

北海道大学合格者(1浪)のメッセージ

北海道大学合格者(1浪)のメッセージ

「志と覚悟」の補足として、SAPIX YOZEMI GROUPのOB・OGのメッセージを紹介します。

「医学部受験は全国から集まるライバル達と争う戦いです」。文字通り、全国の強者達と鎬を削る争いですね。

「自由になる時間は全て勉強に捧げてください」。この方は1年間浪人してしまったこともあり、インパクトのあるメッセージとなりました。実際にこのような「覚悟」がないと、医学部には合格できません。

医学部受験の準備に、「早すぎる」ということはありません。「医師になりたい」と思ったら、その日・その瞬間から準備を始めてください。そういった努力や覚悟がないと、説明したデータの通り、合格するのは困難です。厳しい競争に勝つ覚悟を持ってください。

 

PART1のまとめ 医師として大切なこと

PART1のまとめ 医師として大切なこと

PART1「志と覚悟」のまとめです。

技術の進歩や社会全体の変化などから、人間の代わりに人口知能やロボットがやってくれることが増えている(増えていく)のは事実です。ただし「医療」については、これまで通りに「生身のひと(医師や看護師など)」が行うことを大切にすべきだと思いますが、如何でしょうか。

患者は医師の言葉などに安心し、また信頼して治療を任せることができます。技量も人格も良い医師から、「大丈夫ですよ。私が直します」と言って頂くのが何よりです。「血の通った温かい治療」の出来る医師に、また「安心して命を預けられる」医師になってください。

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東京編 PART2「学力・情報・対策」

小学校 ⇒ 中学校「学ぶを好きになる」

小学校 ⇒ 中学校「学を好きになる」

ここからは具体的に、「合格ためのメソッド(心技体のワザ)」についての説明です。時系列に、小学校から中学校は何をしたらいいか、何をするべきかについてです。

最近、10歳代の若い人がスポーツや将棋などで大活躍しています。中には、小学校前の2・3歳からラケットを振り始めたなどの人もいますが、医学部受験は同じではありません。小学生から医学部の問題を解く必要はないし、実際解けません。全ての物事には段階と順番があります。小学校から中学校は、次のようなことをするのがお勧めです。テーマは「学ぶを好きになる」です。

「人間性の礎」/この後も説明しますが、医師にとって「人間性」はとても大切です。このあたりはご家族の協力が大きい部分ですので、褒めて頂きつつ、誘導してあげて頂きたいと思います。

「興味と関心」/この期間の積み重ねが「大きな貯蓄」となって、あとで大きな大きなプレゼントとなって戻ってきます。すなわち、医学部合格です。素材としては、読書・新聞・ニュースで結構です。またこの時期からも、可能であればボランティア活動など、様々な体験をしてみてください。同年代の人だけでなく、年の離れた人との交流も本当にお勧めです。

「考えて表現」/新聞は「こども新聞」からでも大丈夫です。可能なら、テレビのニュース番組を家族で見て、本人が感想・意見を述べ、家族と語り合うなどが理想的です。このことをご家庭で日課にするのがお勧めです。知識(引き出し)を増やし、表現力を高めること、また面接対策としても効果的です。

「デジタルよりアナログ」/医師になるには「アナログ型」、すなわち「ネットを介さない」コミュニケーションが大切です。友達と喧嘩して仲直りする。外で遊んで怪我をして痛みや危険を知る。生き物を育て悲しい別れを経験して命の尊厳に触れる。このような経験・体験を増やしていってください。

 

高校1・2年 ⇒ 3年「基礎 ⇒ 志望校対策」

高校1・2年 ⇒ 3年「基礎 ⇒ 志望校対策」

高校生になってからのアドバイスです。ここから本格的に医学部受験の対策に入っていきます。

現役合格を目指すとすると、2年生の段階で一定の到達度が求められます。在籍高校の進度に関わらず、自学も含めて、3年生までの範囲は終えておく必要があります。数学は「数学Ⅲ」の範囲も、また理科は2科目分の基礎を終えておきたいです。中高一貫校などであれば学校のペースに合わせて、そうでないなら予備校の活用などが必要となります。センター試験を例にとると、2年生の時点で80%取っておかないと、残り1年で90%に届くのは困難と言えます。それだけ厳しい世界ということです。

続いて3年生からの対策です。未履修や苦手分野は、3年生のなるべく早い時期に終わらせ、克服してください。そして、この後にも触れますが、志望校に合わせて「必要な」対策をしていきます。

学習の仕方については、もちろん「暗記型」も必要・大切ですが、医学部合格には「なぜ?⇒なるほど、そういうことか!」という「疑問・理解型学習」が大切かつ不可欠です。「苦手」は確実にハンデとなります。苦手は作らないようにしましょう。

 

志望校を早めに絞るのが合格へのカギ

志望校を早めに絞るのが合格へのカギ

早めに志望校を絞ることについての説明です。

大学受験の一般常識は医学部受験では非常識です。他の学部であれば、私立文系などは科目・配点がほぼ一定で、基礎を固めれば汎用力もありますが、医学部入試は「そうは問屋が卸さない」世界です。全国に82校もある医学部を、焦点を絞らずに対策するのは無理があります。片手くらいに早くから絞って、重点的に対策しないと合格できない厳しい世界です。

「戦略=戦いを略す」ことが必須で、無駄(無理)なことはしてはいけません。受験科目は国公立も私立も定番がありますが、「科目の配点や出題の傾向」は大学ごとに全部違うと考えるべきです。受験科目の準備の関係で、国公立を受けるかどうか(センター国語と地歴公民も必要か)は、それこそ早く決めるべきです。

国公立はなるべく5校以内に絞っておき、センター試験の取れた点数で最終決定してください(90%ならA大学、87%ならB大学、85%ならC大学など)。

他の学部ならセンター試験の後に新たな志望校を見つけても、限られた期間で何とかなる(間に合う)かもしれませんが、医学部では難しい(間に合わない)と考えるべきです。一分一秒が勿体ないのに、悩んだり、探したり、要項を取り寄せたりに時間を取られるのは避けましょう。医学部は「志望理由書」必須の大学も多く、新たな志望校では「何を書くか」でまた時間がかかってしまいます。医学部合格には、「効率・戦略・危機管理」が不可欠です。このことを忘れずに頑張っていきましょう。

 

新たな受験校対策は「時間が足りない」

新たな受験校対策は「時間が足りない」

急な志望校変更では「時間不足」についての説明です。

国公立と私立3校併願の例で、今春はこのような日程でした。センター試験で目標の点数に届かず、予定していた志望校を受験できないパターンを考えてみましょう。1/16から新たに受験校を探す作業が始まりますが、2/1の出願締切までは、悩んだり、慌てて願書を取り寄せたり、書類を作成する間に終わってしまいます。まさしく「光陰矢の如し」です。

それと前後して私立の最終対策が必要ですので、想定外の2次対策を初めてやる時間は「少ない・時間切れになる」が現実的です。この例だと実質的には、日本大学の1次試験が終わった翌日の2/9あたりから、やっと始められるくらいです。そのような短期間の対策で合格できるでしょうか?医学部はそんなに甘くありません。

 

志望校の選び方 ①

志望校の選び方 ①

志望校の選び方についての説明です。まずは以下の4点です。

「学費」/最初の検討項目です。近年は私立でも学費の減額や特待・奨学生制度の拡充がありますが、やはり国公立と私立は「ケタ違い」です。

「所在地」/学費の関係などで「国公立ならどこでも」もあると思いますが、この点についてもご家族で早めに話し合って頂きたいことです。

「寮生活」/コミュニケーションが大事ですので、「寮が必須は避けたい」などは言えない部分もあります。昭和大学は山梨県の富士吉田市となりますので、覚えておいてください。

「教育内容・特色」/各大学が重視していることと、本人の志望とのマッチングも本当に大切です。「行きたい大学」を見つけて、そこに合格するのがやはり理想ですね。

志望校の選び方 ②

志望校の選び方 ②

志望校の選び方、続いての4点です。

「配点・傾向」/合格のためには自分との「相性」が大切です。「配点」については特に国公立の場合、センター試験・2次試験を通して、各科目の比率は大学によって千差万別です。得意科目の配点が高い大学を選び、苦手科目の配点が高い大学は避けるなどが得策です。「傾向」についても、国立の総合大学は他学部と同一の問題が多く、単科大学や私立大学では医療系のテーマが出るなどの傾向があります。過去問を早めにチェックして、出題傾向を把握してください。

「難易度」/合格できるかを知るための一番の目安は、倍率や受験者数の増減よりも「最低点」です。受験当日までにその点数を(各大学の試験時間内に)取れるようにすることがポイントです。

「国公立」/前の説明の通り、予め絞っておいた中から、センター試験の点数を見て決めましょう。

「私立」/試験日は毎年少しずつ変わります。受験学年になったら、1次試験に加えて、2次試験の日程や合格発表日・手続締切日も必ず確認して最終決定してくだい。例年、8月上旬頃には全大学の日程が出揃うのでチェックをお願いします。

国公立前期 センター国語・数学の配点

国公立前期 センター国語・数学の配点

志望校との「相性」についての説明です。国公立大学のセンター試験の国語と数学の配点を例に挙げます。

各科目の配点は大学によって異なりますが、基本パターンでは、国語・数学ともにそれぞれ満点の約22%を占めます。グラフでは、配点が基本パターンと異なる大学を表示しています。

それぞれ、グラフの上側にリストされている大学は高得点が必須であり、その科目で失敗するとハンデとなる大学です。逆に下側にリストされている大学は、その科目が苦手な受験生向けの大学で、また本番で失敗した受験生の受け皿となります。各科目の配点は変更となる場合がありますが、自分の得意・不得意を考慮しながら、志望校を絞る・受験校を決める際の参考にしてください。

 

国公立前期 センター・2次の配点比率

国公立前期 センター・2次の配点比率

志望校との「相性」について。国公立のセンター試験と2次試験の配点比率を例に挙げます。

国公立の前期日程の場合、全体としては2次試験重視や半々の配点比率が主体です。センター試験の7科目で90%の高得点が目標であり、かつ、配点比率の高い2次試験でも高得点が必須となります。

一方で、全体の約3割の大学ではセンター試験の比率のほうが高くなっています。記述式中心で高難度の2次試験では高得点が望めない、センター試験の高得点(スポーツに例えれば先取点)で合格に近付きたい場合は、センター試験重視の大学から選んで受験するのも選択肢の一つです。ただし忘れてはならないことですが、「2次試験はそんなに取れなくても合格」という訳ではありません。2次試験でも油断することなく、1点でも多く得点を積み上げてください。「先取点は取ったが、逆転負け」とならないようにしましょう。

 

私立 各教科の配点比率

私立 各教科の配点比率

志望校との「相性」について。私立の一般入試の配点比率を例に挙げます。

私立の一般入試は、科目も配点も「定番型」が大半です。科目は英語・数学・理科2の4科目で、配点は理科の2科目だけで満点の40%以上を占める大学が主流です。

理科が苦手な場合は表内の7校を中心に受ける手もありますが、候補は少ないのが現実です。私立の場合は、重要科目の理科を頑張る、というのが鉄則です。理科2科目、しっかりと対策しましょう。

 

センター試験の対策

センター試験の対策

ここからは具体的な試験対策についての説明です。最初にセンター試験対策です。

国公立のセンター試験の合格者平均点は、実際は85〜95%くらいの範囲にあります。点数が低めの大学の場合は、80%台の合格者が多いということになりますが、目標点はあくまでも高めの90%と考えてください。7科目(私立は各大学の必要科目)で90%が目標ですので、文系科目の国語や地歴公民は低めの85%と想定すると、残りの英語・数学・理科は「95%以上」が現実的となります。時間の逆算から考えれば、2年生の時点で80%取れていれば「前途有望」です。是非頑張ってください。

対策としては、知識を増やすことに加え、慣れとスピードが大切です。まず、「紛らわしい選択肢」に注意してください。また、特に数学などは解答形式にも慣れることで確実に得点してください。そして時間配分もとても大切です。英語なら後半の大問4問(長文中心で配点も高い)で確実に得点することが必要です。最初の2問(文法など中心)を早めに解いて、残りの4問に十分な時間を確保することが大切です。事前に大問ごとの解答時間を決めておくのが得策です。見直しなどにも、5〜10分は取っておくことが理想です。

 

中3生から「大学入学共通テスト」

中3生から「大学入学共通テスト」

今の中3生から実施される新テストについての説明です。

現在のセンター試験は、中3生が受験する年から「大学入学共通テスト」に移行します。大きなポイントは次の2点です。

1点目として、センター試験の解答形式は「択一式」のみですが、新テストでは国語と数学に「記述式」が加わります。問題数はそれぞれ3問程度の予定ですが、「共通テスト」においても「記述式」が加わることは大きな改革と言えます。

2点目として、英語については従来の「読む」「聞く」に加えて、「話す」「書く」の能力も加えた「4技能評価」に転換となります。今の中3生〜小6生までは大学入試センターが作成の共通テストと民間の資格・検定試験との併存ですが、小5生以降は民間の試験のみとなる予定です。

新テストは「思考力・判断力・表現力」をより一層重視する共通テストとなり、大学入試は確実に変わります。SAPIX YOZEMI GROUPでは、「リベラル読解研究」など「思考力・判断力・表現力」を身につけるための講座を豊富に取り揃えていますので、ご活用ください。

各大学の試験対策 ①

各大学の試験対策 ①

続いて、各大学の試験対策についての説明です。

「勝負に勝つには、相手を知ること」が大切です。志望校を絞る段階からですが、まずは「どんな問題が、どれだけ出るか」を把握しましょう。書店や学校の図書館、予備校の自習室などで「ざっと見てみる」ことから始めても結構です。また、Y-SAPIXのWEBサイト「医学部研究室」では、国公立大前期の英語と数学について、入試問題の「分類・分析」も掲載しています。また私立大も含めて、各大学の「合格最低点」も検索可能ですので、是非ご活用ください。

医学部入試の特性として、当然のことながら英語や理科、小論文などでは「医療系テーマ」や「専門用語」の知識が必要となります。単科大学などでそのような出題がありますので、その類いの知識が必要かを事前に調べておきましょう。知識の習得や対策が必要なら、早いうちから(出来ることから)やっておきましょう。

例としては、東京医科歯科大学の英語は「超」長文が1題で、内容も医療系のテーマの出題が多くなっています。対策としては、始めから医療系の難しい英文はなかなか読めませんので、最初は日本語の文献から慣れていくのも一つの方法です。

 

各大学の試験対策 ②

各大学の試験対策 ②

各大学の試験対策の続きです。

志望校対策として「過去問練習」などをする際は、「時間」を意識することがきわめて大切です。「授業で教われば分かる、家庭教師が横に居れば分かる、所定の時間より長い時間なら解ける」では全くもって不十分です。試験当日までに、「時間内に自分一人で解ける」ようにする必要があります。このことを絶対に忘れないようにしてください。

医学部入試には、「量が多く、超難問が含まれる」という特性もあります。これは、多くの患者を診療する練習として、また優先順位を見極める練習としての意図が含まれています。超難問はいわゆる「捨て問」で、解いてはいけない・解くべきではない問題です。試験当日の使命は「取れる問題を確実に取る」ことですから、「頑張っても解けない」問題で時間を浪費するのは避けましょう。

 

奈良県立医大の「トリアージ(選別)入試」

奈良県立医大の「トリアージ(選別)入試」

前のスライドのような練習を、文字通りに入試で課している大学についての説明です。

奈良県立医科大学の前期試験は「トリアージ入試」のネーミングで入試を行っています。医療ドラマなどでもご覧になったことがあると思いますが、災害医療で必要となる能力をみるための試験です。通常の1科目ごとに独立した試験方式と異なり、3科目を180分連続という長い時間の中で解かなければなりません。問題を解く順番や時間の配分は本人の自由ですが、どうするかの判断が合格への「分かれ道」となります。

この入試では、180分間を適切に使い、解ける問題を確実に取って合格点に到達する努力が求められます。つまり、限られた時間の中で一人でも多くの命を救う練習を、なんと「入試の時に」課しているのです。

私立でも、昭和大学と帝京大学が、2科目合わせて120分程度という試験方式を設定していますので、志望する方は覚えておいてください。

 

面接・小論文(志望理由書)の趣旨

面接・小論文(志望理由書)の趣旨

ここからは学科試験以外の対策についての説明です。面接や小論文の趣旨についてです。

学科試験では学力を、面接などでは適性や意欲などを確認するために行われます。

センター試験や私立の一部はマークシート方式ですので機械が判定していますが、面接や小論文は「ひと」がじっくりと判断することになります。「この受験生を採りたいな、うちの大学で(自分の手で)育てたいな、この人は医師に向いているな」と判断してもらえるかどうかがポイントです。言い方を変えれば、面接などは「医師に向いてない受験生を見分ける」ために行われるということです。

 

「大学からのメッセージ」の理解が大切

「大学からのメッセージ」の理解が大切

面接などで高い評価を受けるために必要なことについての説明です。それは、「大学からのメッセージをきちんと理解する」ことです。

各大学が発表している「アドミッションポリシー(入学者受入方針)」は、単なるの言葉の羅列ではありません。大学からの「力強いメッセージ」と考えましょう。志望校を絞る際、そして実際に受験する際は、各大学のメッセージをしっかりと理解することが大切です。

私が面接の練習をする際は、必ず次のことを確認します。「本学のアドミッションポリシーは見ましたか?どんなことが書いてありましたか?」「本学のアドミッションポリシーとあなた自身が合致することを具体的に教えてください」。

実際に練習をしてみると、数日後に面接を受ける状況にもかかわらず、準備不足の人も見受けられます。受ける大学・入りたい大学からのメッセージは十分に理解し、説明出来るようにしましょう。「この大学に入りたい、頑張りますので入れてください」という表現も出来るといいですね。

「変化球型」の面接 ① 京都大学

「変化球型」の面接 ① 京都大学

ここからは変化球型の質問・課題についての説明です。まずは京都大学の面接です。

今年の合格者に実施したアンケートから、この質問がされたことが判明しました。なんとアニメの「ドラえもん」についてです。実際に受験した人は、いきなりアニメの話題で驚いた人も居た筈ですが、医学部の面接や小論文などでは、一見すると医療とは全く関係ない質問や課題が増えています。ところが、このような質問や課題は、実は医療と深く結びついています。

京都大学の質問の意図は「頭の柔らかさ・視野の広さ」、「予想外の質問に対してどう対応するか」を見たいためと想像できます。そして、次のことが一番のポイントで、この質問を医療の現場に例えるとどうなるかを考えてみましょう。スネ夫のキャラクターは「意地悪」などの設定ですので、「好き嫌いなく患者や他のスタッフとコミュニケーション出来るか」を見るというのが、この質問に隠された本当の意図であると思われます。

ということで模範回答としては、「スネ夫は趣味が多くて個性的です」「人間味があります。いい所もあると思います」などがよいでしょう。「友達にしたくない、このような人とは絶対に接触しない」などは避けるのが賢明です。最近の面接などでは、「対人関係の対処法」についての質問が増えていますので、「関係なさそうな質問でも実は医療と関係がある」という意識で面接に臨むことが大切です。そのような「心の準備」があるかないかで、面接などの評価は大きく変わります。準備は本当に大切ですね。

 

「入学者受入方針(AP)」のトップ3

「入学者受入方針(AP)」のトップ3

各大学のアドミッションポリシーに出てくるキーワードランキングについての説明です。キーワードの集計結果はこのようになりました。

第3位は「自ら考え・行動・解決」です。医師に必要な素養の一つは、「受動的ではなく能動的な態度」です。また、「答えのないものを深く探究する態度」ともいえるでしょう。

続いて第2位は「豊かな人間性」です。「技量」だけでなく、「人格」も優れた医師になるべきというところでしょう。

そして第1位、最も多かったキーワードは「協調性・コミュニケーション」です。さきほどの続きとなりますが、まさしく「スネ夫は大嫌い」ではダメということです。キーワードの中には「医学を学ぶ高度な学力」などもありますが、ランキングとしては下位になっています。「そのあたりのことは大前提であって、あえて表記するほどのことではない」というところでしょう。大学が受験生に求めること、メッセージとして特に伝えたいことは、上記のようなキーワードが中心でした。

 

「変化球型」の面接 ② 東邦大学

「変化球型」の面接 ② 東邦大学

変化球型の質問・課題についての説明に戻ります。東邦大学の面接です。

毎年多くの、また新種の変化球を投げてくるのがこの大学です。ある年には「絵(三角形や四角形、丸型や星型)」についての課題が出され、「言葉だけで説明して同じものを書かせる」という内容でした。

この課題も、実は医療現場と深く結びついています。「患者や他のスタッフへの説明・指示能力」を見るためのものです。説明が曖昧・不明確だと、課題の絵とは全く違うものが出来てしまいます。医療現場に置き換えれば、「処方する薬を間違える、量を間違える」などで「医療事故」になりかねないということです。

この課題では、それぞれの形・大きさ・位置を出来る限り正確に伝えることが大切です。医療現場での不注意やミスは「命の危険につながる」ことの意識が必要なのと同じです。このことを忘れないようにしてください。

「複数の課題を用いた」面接試験(MMI)

「複数の課題を用いた」面接試験(MMI)

面接試験の方式の一つ「複数の課題を用いる(Multiple Mini Interview)」についての説明です。

今年から東京慈恵医科大学と藤田保健衛生大学が採用した方式です。1対1の「対話方式」で、5分〜10分程度のものを複数回行うというものです。

この形式の意図は、従来の紋切り型の面接ではなく、より受験生の本質を見るためのものです。事前の練習やうわべのテクニックだけでは通用しない、高度な面接試験と言えます。

実例として横浜市立大学の推薦入試では、このような5項目を確認しています。一般入試での採用は、国立の東北大学・千葉大学、私立の東邦大学・東京慈恵会医科大学・藤田保健衛生大学が同様の方式を採用しています。受験生の本質を見るための方式として、今後も採用大学が増えていきそうです。

 

順天堂大学の出願と面接

順天堂大学の出願と面接

特徴的な大学例の紹介に戻ります。順天堂大学についての説明です。

提出書類にこれまでの活動等を記載するのは一般的ですが、面接の際にその内容を証明する資料を持参するというのはとても特徴的です。資料としては、小学校からの通知簿などが該当します。

この措置の意図は、通知簿の「担任の所見」などにより、受験生の「人格・性格・人となり」が分かるからと思われます。短時間の、初対面の面接で知る情報には限りがありますので、通知簿などの情報で小さい頃からの生い立ちなどを知り、そのあたりも含めて医師としての適性を見るためということでしょう。

順天堂が志望校の場合は、小学校からの通知簿などを保存しておくようにお願いします。

 

面接で注意すべきこと

面接で注意すべきこと

面接での注意点についての説明です。例年の面接練習での悪い例をもとにアドバイスいたします。

面接は用意したこと・覚えてきたことを発表する場ではありません。面接官の一つ一つの質問に合わせて回答する、「会話のキャッチボール」を行う場です。また、「アイコンタクト」も礼儀の基本です。出来ない人は医師には向きません。患者の顔も見ないで診療する医師にならないようにお願いします。

全ての回答は「はい」で始めると丁寧感が出ます。例えれば、「ノックしてから部屋に入る」のと同じことです。一人称は慎重・丁寧に「わたくし」を心がけましょう。男子は普段の感覚で、「自分は〜」などと言わないようにしましょう。

無意識の口癖も少なくないので気を付けてください。緊張から、「えーっとですね、あのですね、それはですね」などがやたらと多い人も居ました。また「分からない・知らない」場合は、正直・素直が一番です。背伸びしたり、嘘ついたりは、百害あって一利なしです。面接官には一切通用しませんので、注意しましょう。

さきほどの京都大学のドラえもんなど、困った質問には特に、「相手の質問を繰返している間に考える」のも一手です。「はい。わたしがドラえもんで好きなキャラクターは・・・」と繰返す間に考えましょう。「質問を繰返す」のは、丁寧さや、「面接官の質問をきちんと把握している」ことを示すという利点もあります。面接では答えに詰まることもありますが、長すぎる沈黙は良くないので、なるべく間をおかずに答えるように努めてください。

面接の練習は適切に

面接の練習は適切に

面接の練習方法について説明します。これも例年の悪い例から紹介します。

大切なことは、「練習と思ってはいけない」ということです。「今が本番」のつもりで臨んでください。このような実例がありました。「パンデミックという言葉を知っていますか?」の質問に対し、「全然わかんない」との回答でした。「今は予備校の人と練習してるだけ」という意識だったのでしょうか。皆様はこのようにならないようにお願いします。

本番では、初対面の偉い先生との面接です。練習も本番に近い環境を作ることが不可欠です。つまり、ご家族や担任の先生では緊張感が出ないので、現役生の場合は校長先生などにお願いしてみましょう。Y-SAPIXや代々木ゼミナールでは、クラス担任以外の面識のないスタッフと練習しています。

質問もありきたりの内容だけでなく、「変化球」もどんどん投げてもらってください。内容は医療に全く関係ないことも取り入れておくと、「心の準備」にもなって効果的です。さきほど説明した通り、「対人関係の対処法」につながる質問などが本当にお勧めです。

 

「変化球型」の小論文 愛知医科大学

「変化球型」の小論文 愛知医科大学

変化球型の質問・課題についての最後の事例です。愛知医科大学の小論文について説明します。

さきほどの東邦大学の面接と同様に、「絵」が題材となりました。「絵」の中には、「(工具の)キリ」が2つあり、1つに「濁点」、そして「蜘蛛の巣」が描かれていました。これは実は、江戸時代の「判じ絵(なぞなぞ)」で、それが示すものは「昆虫のキリギリス」という訳です。そして「人を愛することはどういうことかを述べる」という課題でした。

本当に医学部の問題は「超変化球」がありますね。いきなりだと驚いてしまいますね。この意図は、「医療現場は不測の事態の連続であり、冷静かつ的確な判断と対応が必要なので、その練習」ということです。

それでは、「絵が示すもの」についてです。「なぞなぞ」でもあるので、「キリギリス」が思い浮かばなくてもよいのですが、このような予想外の課題に対しても、答えを絞り出す努力が大切です。

そして、「人を愛すること」の解答例です。「人を愛する際は、キリのような攻撃性で相手を従わせるのではなく、蜘蛛の巣のような柔らかさで自分の攻撃性を包み込み、相手を受け止める姿勢が大切」などがよいでしょう。いきなりの課題に対して、このような解答はなかなかできないと思いますが、限られた時間の中でどれだけ最善を尽くせるかがポイントとなります。このような大学では、「変化球あり」の心の準備と、相応の対策が必要となるのは言うまでもありません。

PART2のまとめ 不測の事態への対応

PART2のまとめ 不測の事態への対応

PART2「学力・情報・対策」のまとめです。

これまでお話した通り、医学部入試では簡単には打ち返せない変化球が投げ込まれます。変化球は年々多くなり、また「新種」の変化球も目立ちます。意図的に、「準備しにくい」問題・課題を出していると言えます。

センター試験のように、「答えは1つのみ」ではありません。重要なのは「何と答えるか」ではなく、「どのように対応するか」ということです。学科試験も面接も小論文も、限られた時間の中で最大限の努力をすることが本当に大切です。

教員になるための教育実習は卒業学年の4年次ですが、医師になるための実習は「入試の時から始まっている」ことを忘れないでください。

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東京編 PART3「気力・体力」

全科目終了まで絶対に“あきらめない”

全科目終了まで絶対に“あきらめない”

最後のパートになりました。まずは「気力」から説明します。

今年のセンター試験は、初日の2つめの国語が大きく難化しました。医学部志望者の中にも、ここで失敗した人が居たことでしょう。それでも、その後が本当に大切です。盛り返せるのか、このまま落ちていくのか。「失敗してしまった」と過ぎたことを嘆くよりも、「まだある」と気持ちを切り替えるべきです。センター試験も各大学の試験も、最後の最後まで粘ってください。よく言われることですが、諦めてしまったら、そこで勝負は終わってしまいます。最後まで諦めないでください。

 

九州大学合格者のメッセージ

九州大学合格者のメッセージ

「気力」の補足として、SAPIX YOZEMI GROUPのOB・OGのメッセージを紹介します。

合格を勝ち取るためには、まずは準備を尽くし、「平常心」で臨むようにしましょう。そして試験当日は、「解答用紙を埋める」、「取れる問題を確実に取る」、「点数を最大化する」ことだけに集中しましょう。

 

受験期も合格後も体が資本

受験期も合格後も体が資本

続いて健康管理と体力についての説明です。

受験期は家族の風邪を本人にうつさないようにご注意ください。全員で予防接種を受けるご家庭もありますので、参考にしてください。

晴れて医学部に合格してからも、土台は健康・体力と精神力です。在学中も、研修医の間も、そして正式に医師になってからも、本当にストレスが多いですが大丈夫でしょうか。医師が健康でないと、患者を診ることはできません。医師は運動系の部活やサークルなどの経験者が多いようです。分かる気がします。

 

本日のまとめ「医学部合格者の共通項」

本日のまとめ「医学部合格者の共通項」

最後に本日のまとめです。例年の合格者を見ていて感じる「合格に必要なこと」についての説明です。

3つに絞るのはなかなか難しいのですが、あえて絞るとすればこのようになります。「心技体」「困難を克服」「毎日の積み重ね」です。この3つを忘れずに医学部合格に向けて頑張ってください。グループ一同、皆様の合格をお祈りいたします。立派な医師になって、これからの医療に貢献してください。