国公立大学医学部の一般選抜

※下記の各内容は、2021年度入試の変更点(判明分)を反映しています。

一般選抜の概要

国公立大学の医学部医学科は全国に50校あります。一般選抜(学校推薦型選抜や総合型選抜など以外)については、「前期日程」と「後期日程」の枠組みで、募集人員を分割して入試が実施されます。前期は山梨大(一般選抜は後期のみの募集)を除く49校が実施していますが、後期は半数以下の18校の実施にとどまっています。また募集人員の比率についても、前期と後期はおおよそ9:1の割合で、前期に大きく偏った人数比率となっています。入試のシステムとしては、前期・後期から各1校の複数受験が可能ですが、後期の実施大学数と人数比率から考えても、実質的には前期の「1回勝負」と言えます。

入試教科・科目については、大学入学共通テストは5教科7科目(東京医科歯科大の後期のみ4教科6科目)が必須で、各日程・各大学ともに共通です。一方の2次試験については、前期と後期では傾向が異なります。前期は学科試験3教科と面接の大学が定番であるのに対して、後期は小論文と面接、または面接のみの大学が大半です。

共通テストと2次試験の配点比率についても、前述の2次試験と同様に、前期と後期では傾向が異なります。前期は2次試験の配点比率を高くしている大学が多いのに対し、後期では共通テスト重視の比率が主流です。【図表①参照】

国公立医学部の一般選抜

前期の共通テスト理科

ここからは、入試科目について項目ごとに各大学の指定状況をみてみましょう。はじめに、共通テストの理科の内容です。理科の必要科目数は全大学で「専門科目(4単位科目)」を2科目ですが、大半の大学が「物理・化学・生物からの選択」としていて、東京大などの3校では「地学も選択可能」です。この他に、名古屋市立大、佐賀大の2校は特定科目が必須となっているので、注意が必要です。

共通テストの理科については前述の指定状況となっていますが、「物理と化学」の組合せなら全大学が、また「化学と生物」の組合せなら名古屋市立大、佐賀大以外の全大学が受験可能です。【図表②参照】

国公立前期の共通テスト理科

前期の共通テスト地歴公民

共通テストの地歴公民の指定については、理科の指定と比較すると「定番型」のパターンはありませんが、大学数が最も多いのは、地歴のB科目か公民の「倫理、政治経済」という「4単位科目に限定」のパターンです。また、半数弱の大学は地歴のA科目や現代社会、政経、倫理などの「2単位科目も選択可」としていますので、志望大学がこの範囲に限定出来る場合は、2単位科目で受験するのも選択肢の一つです。ただし、4単位科目で準備しておけば、「全大学に出願可能」です。【図表③参照】

国公立前期の共通テスト地歴公民

前期の第1段階選抜

国公立大学には、2次試験の受験対象(資格)者を限定する「第1段階選抜」という制度があります。これは各大学の志願者を、「共通テストの成績順に所定の人数内に絞る」などのシステムです。このような選抜を行うのは、記述式解答が主体の学科試験の採点精度を確保することや、面接試験の実施にあたって時間や手間を要することなどが理由です。「第1段階選抜」は全大学が実施するものではありませんが、医学部においては前期の僅か1校を除いて実施を予告しています。

実施する際の条件・基準としては、「募集人員に対する所定の志願倍率」が最多のパターンです。倍率が基準に達しない場合や、基準倍率に達しても実施を見送るなどで、実際には「行われない」大学もあります。とはいえ医学部志望者は、「共通テストは目標点を確実に取る。取れないと2次試験に進めない」と考えて臨むべきでしょう。名古屋大前期については、科目不足や科目違いの「失格」以外は志願者全員が2次試験に進めますが、共通テストが難化の年などは第1段階選抜での不合格を回避するために、志願者が集中する可能性もあるので注意が必要です。【図表④参照】

国公立前期の第1段階選抜

前期の2次試験

続いて2次試験の内容についてです。前期日程は学科試験と面接での選抜が基本で、学科試験は英語、数学、理科2科目の3教科4科目型が主流です。

3教科4科目型以外の大学もみてみましょう。科目数が多い例としては、東京大や京都大などの4校が国語も必須の4教科5科目型です。また、横浜市立大、京都府立医科大の2校は国語ではなく、小論文が必須となっています。他に小論文が必須の大学としては、群馬大があります。群馬大は学科試験の英語はありませんが、小論文の課題文に英文が含まれることが通例で、英語の代わりに英文を含む小論文と考えてよいでしょう。また、2021年度から愛媛大で英語に代えて総合問題が課されます。入学者選抜要項では、英文の文章を読んだ上で記述させる問題などが出題される旨が公表されており、英語の学力が得点を左右することになりそうです。

一方の科目数が少ない大学については、理科が1科目の大学、また理科を課さない大学が合わせて7校あります。理科は現役生と浪人生で差のつきやすい教科ですので、この7校は現役生が多く受験するという傾向もあります。なお、このうち弘前大は、2021年度から英語、数学を廃止して総合問題、面接とします。総合問題については、文章や資料の読解、分析を含め総合的思考力を試す、と入学者選抜要項に記載されています。【図表⑤参照】

国公立前期の2次試験

前期の2次試験理科

2次試験の理科は2科目必須が基本で、その選択方法は物理・化学・生物から自由に2科目選択の大学が大半です。2科目必須でその他のパターンは8校あります。東京大は唯一地学も選択可です。北海道大は物理が必須で化学または生物から1科目選択、群馬大、金沢大、名古屋市立大、愛媛大、九州大、佐賀大は、物理と化学の2科目が指定されています。【図表⑥参照】

国公立前期の2次理科

後期の2次試験

前期日程が学科試験と面接での選抜が基本であるのに対し、後期は学科試験を課さない大学が大半です。小論文あるいは総合問題と面接の大学が半数の9校で、名古屋大などの3校は面接のみで選抜します。これらの大学の多くは共通テスト重視の配点比率となっているので、後期では共通テストの点数が合否を大きく左右すると言えます。

大学数は少ないものの、後期で学科試験を課す大学は6校あります。この中では、千葉大、山梨大、岐阜大、奈良県立医科大で2次試験の配点比率が高く、例年2次試験での逆転を狙う受験生が集中し、高倍率となっています。【図表⑦参照】

国公立後期の2次試験

前期の配点比率

続いて、共通テストと2次試験の配点比率についてです。前期日程では、2次試験重視の大学が全体の約6割を占めていま大す。旧帝大をはじめとして、国公立大医学部の難関校は2次重視型の配点比率が多くなっています。

前期の約6割は2次試験重視である一方、配点が同じ大学は6校、共通テスト重視の大学は、3割以下の13校にとどまっています。

マークシート形式の共通テストと異なり、2次試験は記述形式が中心で難易度も高くなります。2次試験での高得点に自信のない場合などは、共通テスト比率の高い大学を中心に志望校を考えるのも一つの手です。【図表⑧⑨参照】

国公立前期の配点比率 ①
国公立前期の配点比率 ②

後期の配点比率

後期日程は前述の通り、2次試験は小論文や面接が主体で、共通テスト重視の配点比率が多くみられます。学科試験のある大学でも、旭川医科大と宮崎大は共通テスト重視の比率となっています。後期は共通テストの得点が合否を左右すると言えそうです。

後期で2次試験重視の配点比率を採用しているのは千葉大、山梨大、岐阜大、奈良県立医科大の4校のみで、すべて学科試験のある大学です。例年、2次試験での逆転合格を狙う受験生が集中し、高倍率となる傾向にあります。

なお、後期は全体的に高倍率の印象が強く、2020年度は志願倍率が16.3倍となっています。しかし、第1段階選抜、前期合格などによる多くの受験辞退者により実質倍率は3.9倍となり、前期の3.3倍と比較しても極端に高いものではありません。【図表⑩参照】

国公立後期の配点比率

共通テスト英語のリーディングとリスニングの配点比率

センター試験における英語の素点(センター試験の配点)は、筆記200点、リスニング50点の合計250点で、それを200点満点に換算(筆記160点、リスニング40点)して選抜に利用する大学がほとんどでした。共通テストでは、筆記に代わるリーディングが100点、リスニング100点となり、各大学の選抜に利用する換算得点は、大きく3つのパターンに分かれました。

国公立医学部医学科全50校のうち、最も多いのはこれまで同様4:1に換算するパターンで、21校と4割を占めます。次に多いのが3:1の13校で、1:1の12校が続き、それ以外の4校はいずれもリーディング重視の配点となっています。素点通りの1:1は医学科全体の約4分の1にとどまる形となりましたが、今年度までのセンター試験以上にリスニングの得点が重要になってくることには違いありません。

なお今年度までセンター試験のリスニングを一般入試に課していなかった東京大と滋賀医科大が、それぞれ7:3、4:1で課すことにより、50校すべての国公立医学部医学科でリスニングを課すこととなりました。【図表⑪⑫参照】

国公立の共通テスト英語の配点比率 ①
国公立の共通テスト英語の配点比率 ②