- 「医学部進学フォーラム 2017」実況中継一覧
- 『医学部合格への道』実況中継(東京編・7/17) 『医学部合格への道』実況中継(大阪編・7/23) 『17年度入試分析と最新入試情報』実況中継(7/17)
2017年7月、東京、大阪の2会場で、SAPIX YOZEMI GROUP特別協賛による「医学部進学フォーラム2017」が開催され、その中のイベントとして「入試分析セミナー『17年度入試分析と最新入試情報』」と題するY-SAPIX入試情報担当者による講演が行われました。
ここではその講演の内容を実況中継方式でお伝えします。
PART1「17年度入試分析」
国公立の入試状況(過去5年間)
国公立大学前期日程の入試状況についての説明です。
この5年間の推移でみると、国公立大学前期日程の志願者数は15年度入試から3年連続で減少しています。倍率(志願者数と合格者数で算出)も、3年連続で低下しています。志願者の減少や倍率が低下したのは、医学部の倍率や難易度が高くなりすぎたことが主な理由です。ただし、後のスライドにあるように、合格するための難易度に変動はありません。
状況としては、医学部志望者の中の「学力下位層が抜けた」ということになります。医学部の場合、多少の倍率変化があっても難易度は変わらないので、早い時期からしっかり勉強して合格を勝ち取りましょう。
倍率ダウンでも難易度は変わらない①
倍率が低下しても、難易度が変わらないことについての説明です。
17年度の金沢大学の前期は志願者数が25%も減少し、倍率も4.0倍→3.1倍に低下しました。それでは、難易度がどのように変化したのか見てみましょう。倍率の低下によって難易度(合格最低点)も低下するのが普通と思われるかもしれませんが、医学部は「そうはいかない」ものなのです。
データにある通り、最低点は「変わらない」どころか、「上昇した」ものもあります。金沢大学は合格最低点を「センター試験」「2次試験」「総合点」の3区分で発表していて、センター試験こそ1%の低下がありましたが、2次試験と総合点については、逆に1%強の上昇となってしまいました。各試験の問題の難易度が変わりますので、数字だけの単純な比較は出来ない部分もありますが、「最低点は上昇」という厳しい状況(倍率は低下しているのに…)です。これが、「医学部入試の実状」と考えてください。
倍率ダウンでも難易度は変わらない②
前スライドと同様で、愛媛大学の例です。
愛媛大学の前期も志願者数が27%も減少し、倍率も9.8倍→7.2倍に低下しました。ただし、2次試験と総合の合格最低点は金沢大学と同様に上昇しています。さきほどもお話した通り、「学力的に下位の志望者が抜けただけ」と考えて頂くとよいと思います。人数や倍率が変わっても、「合格ライン」は変わらないので、このことを忘れずに頑張っていきましょう。
合格最低点の比較 金沢大と山梨大
合格最低点は大学によって大きく異なることについての説明です。
金沢大学前期と山梨大学後期は、ともにセンターと1次試験が約4:6の配点比率です。また、17年度の合格最低点も、センター試験はともに約8割でした。このように、この2大学は配点比率とセンター試験の最低点は類似しています。ただし、2次試験の最低点には大きな開きがあります。金沢大学の2次試験は他学部と共通の問題が大半で、難易度も医学部としては比較的容易なため、2次試験の最低点は約7割と高くなっています。一方、山梨大学の2次試験は難問が多く、教科別ではなんと3割台の点数での合格者が存在します。
合格への指針となるデータはいくつかありますが、一番の目安となるのは、やはり「合格最低点」です。志望校を絞る際や、また各大学の試験対策をする際は、「何点取れば合格出来るか」を把握することが大切です。Y-SAPIXのWEBサイト「医学部研究室」では、「英語と数学の問題分類」というデータがありますので、こちらも是非ご活用ください。
データの見方 合格最低点の活用法
合格最低点データの活用方法についての説明です。
国公立大学の合格最低点は「総合点」での公表が大半です。さきほどの金沢大学などの場合は、2次試験だけの最低点が公表されていますので、具体的な点数が分かります。それでは、「総合点」だけの公表方法の場合は、どのように活用すればよいのでしょうか。17年度の千葉大学を例に挙げます。
最初に、「見込・目標」のセンター試験得点を出してください。続いて、「その点数だと2次試験では何点取れば合格できるか」を計算してみましょう。スライドにある通り、「総合点」から「センター試験の見込・目標点」を引いて、残った点数を「2次試験の満点」で割れば、「2次試験で必要な得点率」が出てきます。
ここで大切なことは、「最低点」とは「合格者の下限値」ということです。つまり、「最低でも〇〇点」という状況ですから、そのことの意識が絶対に必要です。「ギリギリでの」合格ではなく、「余裕のある」合格を目指すためには、「合格者平均点」を目標にすることをおススメしますが、まずは「最低点」を取るところから始めていきましょう。
過去問など解いて練習する時に重要なことは、「所定の時間を把握・意識して」練習することです。試験当日までに、各大学の合格に必要な点数を取れるように、毎日の学習を積み重ねていきましょう。当日は、「時間内に自分一人で解く」必要があります。頑張ってください。
私立の入試状況(過去5年間)
私立大学の入試状況についての説明です。
国公立大学と異なり、私立大学は志願者の増加が続いています。ただし、この2年間は連続で大学の新設(東北医科薬科大学と国際医療福祉大学)がありましたので、この新設分を除いた集計では、私立大学も横ばいから減少の傾向です。
倍率(志願者数と合格者数で算出)も14年度がピークで、15・16年度は2年連続で低下しました。ただし、今回の17年度は3年ぶりの上昇となりました。これは、「合格者の入学手続率が高く、その結果として補欠合格者が減った」ためです。倍率の上昇によって難易度にも変化があったかについては、あとで説明いたします。
私立の1次選考合格率
私立大学の1次試験合格率についての説明です。
私立大学の場合、学科試験(大学によっては小論文も)で1次選考を行うのが通例ですが、各大学の合格状況を示したのがこちらのグラフです。首都圏の大学を合格率の低い順に並べると、このようになります。左端の東海大学をご覧ください。他の大学よりも科目が少ない(理科が1科目)ため、合格率の低さ(高い倍率)がダントツです。1次選考の合格率が「ひとケタ」で、とても厳しい状況です。
東京慈恵会医科と順天堂大学は3割近くの合格率で一見すると高めの数字ですが、ともに難易度は高い大学ですので、入り易い訳ではありません。高倍率の私立は1次合格さえ「至難の業」といえます。2次選考も面接(小論文)が待ち構えています。医学部を目指すと決めたなら、その日・その瞬間から努力を積み重ね、厳しい競争に勝ってください。
私立の合格最低点
それでは、私立大学の合格最低点についての説明です。倍率の上昇によって、難易度(合格最低点)にも変化があったかについてです。
結論からいえば、国公立大学と同様に難易度は全体としては安定しています。今回の例では、北里大学が倍率・最低点ともに上昇、昭和大学が倍率・最低点ともに低下などもありますが、倍率と最低点が逆の動きとなった大学もあります。
過去には、学費の大幅減額によって倍率・難易度ともに急上昇した例もありますが、そのような特殊事情がない限りは、難易度も概ね安定しています。各大学から公表されている「合格最低点」が「合格への目標点」となります。さきほどもお話した通り、所定の試験時間内にこの点数を取るために、日々頑張っていきましょう。
推薦入試の状況① 山梨大<地域枠>
推薦入試の状況について説明します。
これまでは「医学部は難しい」という、話すのも聞くのも辛いデータばかりでしたので、ここからは視野に入れて頂きたい「合格率の高い推薦入試」の例を紹介します。ただし、次のような条件や状況が一般的ですので、注意が必要です。
- 現役生のみが多い
- 地元出身者のみが多い
- 地域枠入試は卒業後の勤務が指定される
- 受験準備は一般入試と共通ではない
- 不合格のリスクあり
このスライドは山梨大学の地域枠入試です。合格率でみると、一般入試が僅か6.2%に対し、この推薦入試はなんと39.3%もの合格率となっています。「県内の1浪生まで」の指定がありますが、この後のスライドにもある通り、他大学でもこのような入試を行っています。合格率が高めの事例もありますので、是非参考にしてください。
推薦入試の状況② 金沢大<富山県枠>
同様に、金沢大学の「富山県枠推薦」です。
17年度の入試状況は全員合格(募集が2名に対し志願者も2名で、そのまま合格)でした。富山県内で9年間の勤務が義務付けられているため、例年志願者自体も少なく、このような状況となっています。
この入試は「地元以外からも出願可能」ですが、厚生労働省から医学部の地域枠入試は「原則、地元の出身者に限定」の方針が発表されました。現在は「全国から出願可能」でも、今後は「地元に限定」に変更となる大学もありますので、その点には注意が必要です。覚えておいてください。
推薦入試の状況③ 岐阜大<(推薦)一般>
国公立大学の最後として、岐阜大学です。
岐阜大学の推薦入試は「地域枠」のほかに、「一般枠」としての募集があります。現役生のみが出願可能ですが、合格率は5割を超えていて、一般入試よりもかなり高い数字です。
国公立大学は推薦入試でもセンター試験必須の大学が多く、このスライドのように「85%以上」などの基準点もあります。ただし、その大学の一般入試よりも合格率が高い例がありますので、受験校の候補として考えてみる価値はあると思います。
推薦入試の状況④ 東京医科大<一般枠>
ここからは私立大学の実例です。最初は東京医科大学です。
現役生のみ出願可能ですが、高倍率の私立大学で1/4の合格率は「稀有な存在」といえます。スライドには17年度の志願者数を入れておきましたので、ご覧ください。推薦は83名、一般は3,290名と、まさしく「ケタ違い」の状況です。
推薦入試の状況⑤ 東京女子医科大<公募>
最後に、東京女子医科大学の実例です。
こちらも1/4強の合格率です。一般入試よりもかなり高い数字です。
Y-SAPIXのWEBサイト「医学部研究室」では、国公立・私立大学ともに次のデータを検索可能です。是非ご覧頂き、志望校選択の参考にしてください。
- 入試結果(志願者数・倍率など、合格最低点)
- 選抜方法(各大学の科目・配点など、パターン分類)
PART2「最新入試情報」
国公立 今後の入試変更点(主要分)①
今後の入試変更点についての説明です。
このスライドは18年度、来年の入試の国公立大学です。面接や2次科目の追加などが多い中で、和歌山県立医科大学は小論文を廃止します。私立大学は小論文も必須の大学が大半ですが、国公立の前期では小論文必須の大学はごく僅かです。和歌山県立医科大学は来年の入試から小論文なしで受験できますので、志願者の増加で難易度も上昇となりそうです。国公立の前期で小論文が必須なのは、群馬大学と横浜市立大学のみに変わります。
国公立 今後の入試変更点(主要分)②
続いて、再来年19年度の国公立大学です。今の高2生が受験する年の内容です。
この中で最も影響が大きいのは、九州大学の変更点です。九州大学は来年の入試まで、センター試験と2次試験を合わせて理科が「3科目必要」な唯一の大学ですが、再来年からは物理と化学の2科目選択で受験可能に変わります。こちらも志願者の増加などが見込まれますので、覚えておいてください。
私立 今後の入試変更点(主要分)
変更点の最後として、来年18年度の私立大学です。
この中では、日本医科大学の学費減額が注目です。6年間の総額で一気に600万円近くの減額となり、私立の中で学費の安いグループの仲間入りとなります。学費の減額は倍率と難易度の上昇につながるケースが多く、日本医科大学も同様の状況になりそうです。学費の減額はメリットですが、志望している方はご注意ください。
中3生から「大学入学共通テスト」
今の中3生から実施される新テスト「大学入学共通テスト」についての説明です。
現在のセンター試験は、中3生が受験する年から「大学入学共通テスト」に移行します。大きなポイントは次の2点です。
1点目として、センター試験の解答形式は「択一式」のみですが、新テストでは国語と数学に「記述式」が加わります。問題数はそれぞれ3問程度の予定ですが、「共通テスト」においても「記述式」が加わることは大きな改革と言えます。
2点目として、英語については従来の「読む」「聞く」に加えて、「話す」「書く」の能力も加えた「4技能評価」に転換します。今の中3生~小6生までは大学入試センターが作成の共通テストと民間の資格・検定試験との併存ですが、小5生以降は民間の試験のみとなる予定です。
新テストは「思考力・判断力・表現力」をより一層重視する共通テストとなり、大学入試は確実に変わります。SAPIX YOZEMI GROUPでは、「リベラル読解研究」など「思考力・判断力・表現力」を身につけるための講座を豊富に取り揃えていますので、ご活用ください。
本日のまとめ
最後に本日のまとめです。
来年もこのイベントが開催される予定です。高3生以上の方は来年の入試で合格して頂き、高2生以下の方は来年も是非ご参加ください。
グループ一同、皆様の合格をお祈りいたします。立派な医師になって、これからの医療に貢献してください。