「医学部を語る〜首都圏私立編〜」イベントレポート(2016年夏実施)

2016年夏、全国各地8つの会場にて、代々木ゼミナール・Y-SAPIX共催セミナー「医学部を語る」を開催しました。

医学部医学科全体の動向や今後の展望を分析した第1部全国編に続き、第2部として、各地の医学部に焦点をあて、近年の入試状況や対策等についてお話ししました。

私立大医学部の入試について

一般入試について

入試科目

多くの私立大医学部の入試科目は、1次試験が英語・数学・理科2科目、2次試験が面接・論文となっています。

入試科目表
大学名 英語 配点 数学 配点 理科 配点 その他
獨協医科 200 200 2 200 面・論
埼玉医科 150 100 2 200 面・論(50)
北里 150 150 2 200 面・論・適性検査
杏林 100 100 2 150 面・論
慶應義塾 150 150 2 200 面・論
順天堂 200 100 2 200 面・論
昭和 100 100 2 200 面・論
帝京 英、[国・数・物・化・生]から2科目
東海 100 100 1 100
東京医科 100 100 2 200 面・論・適性検査
東京慈恵会医科 100 100 2 200
東京女子医科 100 100 2 200 面・論・適性検査
東邦 150 100 2 150 面・基礎学力試験
日本 100 100 2 200 面・論・適性検査
日本医科 300 300 2 400 面・論
聖マリアンナ 100 100 2 200 面(100)・論(100)・適性検査
自治医科 25 25 2 50 面・論

それぞれの特徴についてみていきましょう。まず1次試験については、数Ⅲの範囲を中心に出題する学校が多いこと、そして国公立大医学部に比べて理科の配点が高いことが挙げられます。高校では数Ⅲや理科の全範囲を終了するのが高3の半ば〜冬ごろになるなど、進度が遅くなりがちです。つまり、この点においては現役生よりも浪人生の方がこれらの科目を勉強する時間を多くとれるため有利となります。医学部現役合格を目指すのであれば、数Ⅲや理科に早いうちに取り掛かるようにしましょう。

次に2次試験の特徴ですが、私立大医学部は国公立大よりも論文を課す大学が多くなっています。国公立大の前期試験では、面接を行う一方論文は課さないところもありますが、私立大の医学部はほとんどの大学が論文を取り入れています。論文は一朝一夕で書けるようになるものではないため、早めに練習を開始し、添削指導を受けるようにしましょう。

入試のスケジューリングは早めに

私立大医学部の入試は1次試験・2次試験が異なる日程で実施されることが多いため、志望校の受験日が重なることがあります。

そのため、あらかじめいつどの大学を受けるのかという計画を立てておくことが、非常に重要です。例えばA大学の2次試験とB大学の1次試験が重なっていて、A大学の1次試験に合格した場合にどちらを受験するのか、などのいくつかに場合分けした日程づくりが必要です。

また、国公立大と私立大を併願する人はさらにセンター試験のことも考えなければなりません。センター試験対策ももちろん重要ですが、センター試験が自分の目標点まで取れた場合とそうでない場合を考えてスケジュールづくりをしましょう。

大学の試験日程は概ね夏頃には出揃いますので、ぜひ早いうちからシミュレーションをしてみてください。

2016年度私立大医学部入試状況

一般入試

2016年度の私大医学部一般入試の入試状況は以下の通りでした。

2016年度 一般入試 入試結果
大学 募集
人員
志願
者数
受験
者数
合格
者数
志願
倍率
実質
倍率
合格最低得点率
獨協医科 53 1,675 1,517 104 31.6 14.6
埼玉医科 前期 62 2,679 2,524 65 43.2 38.8 60.8%
後期 45 2,636 2,107 48 58.6 43.9 60.8%
北里 84 2,214 2,010 221 26.4 9.1 59.6%
杏林 91 2,784 2,649 124 30.6 21.4
慶應義塾 68 1,689 1,436 167 24.8 8.6 56.4%
順天堂 63 2,081 2,006 136 33.0 14.8
昭和 1期 78 3,962 3,722 267 50.8 13.9 68.5%
2期 20 1,935 1,818 34 96.8 53.5 70.3%
帝京 110 7,567 6,975 194 68.8 36.0 74.3%
東海 63 5,398 4,989 143 85.7 34.9 84.0%
東京医科 75 3,620 3,231 154 48.3 21.0
東京慈恵会医科 110 2,276 2,073 316 20.7 6.6 61.5%
東京女子医科 75 1,664 1,597 179 22.2 8.9 64.0%
東邦 115 3,242 2,857 129 28.2 22.1 68.0%
日本 A方式 99 4,521 4,002 215 45.7 18.6 58.9%
N方式1期 3 156 136 3 52.0 45.3
日本医科 116 2,241 2,132 116 19.3 18.4
聖マリアンナ医科 100 3,648 150 36.5
自治医科 123 2,292 2,258 123 18.6 18.4

およそ50名〜100名程度の募集人数に対して何千人もの志願者や受験者がおり、志願倍率・実質倍率ともに高い状況が続いています。

私立大の一般入試では国公立大とは異なり、センター試験での第1段階選抜に相当するものは行われませんが、志願者数と実際の受験者数を比較すると、約100〜600名ほどの出願者が試験を辞退しています。その理由はさまざまだと思いますが、先述の私立大医学部の入試日程にも関係があると言えるでしょう。

また、合格最低点は60%から70%程度の大学が多くなっています。一般的に、入試問題が易しい大学や科目数の少ない大学では、高い得点率が必要になるので注意が必要です。

センター試験利用入試

2016年度 センター試験利用入試 入試結果
大学
(○内数字は教科数)
募集
人員
志願
者数
受験
者数
合格
者数
志願
倍率
実質
倍率
合格最低得点率
獨協医科 ③ 20 1,099 1,077 80 55.0 13.5
埼玉医科 ④ 10 722 708 10 72.2 70.8 82.0%
杏林 ③ 25 1,191 1,178 40 47.6 29.5
順天堂 ⑤ 20 901 896 28 45.1 32.0
東京都
地域枠
10 134 126 10 13.4 12.6
新潟県
地域枠
2 14 12 1 7.0 12.0
併用 35 874 836 58 25.0 14.4
昭和 地域枠 ⑤ 12 418 418 18 34.8 23.2 77.9%
帝京 ③ 10 963 960 11 96.3 87.3 80.0%
神奈川県
地域枠
10 127 125 10 12.7 12.5
前期 10 872 862 30 87.2 28.7
後期 若干名 44 43 5 8.6
東京医科 ⑤ 15 928 915 48 61.9 19.1

センター試験利用入試は募集人員が一般入試と比べて少なく、また1次試験はセンター試験のため、遠方にある大学でも比較的気軽に出願できることから、競争率は一般入試よりもさらに高くなっています。

合格最低得点率を公表していない大学がほとんどですが、例えば昭和大学(地域枠)の最低得点率は77.8%と、国公立大医学部受験生のセンター目標得点と比較すると低めの印象です。しかし、センター試験利用入試は募集人員が少ないこともあり、合格最低得点率は年度によって大きく変動しますので注意してください。

推薦・AO入試

2016年度 推薦・AO入試 入試結果
大学 方式 募集
人員
志願
者数
受験
者数
合格
者数
志願
倍率
実質
倍率
獨協医科 地域特別枠 10 47 47 10 4.7 4.7
指定校 20 67 67 20 3.4 3.4
埼玉医科 推薦 10 53 53 11 5.3 4.8
北里 指定校 35 77 77 49 2.2 1.6
東京医科 公募 20 99 99 20 5.0 5.0
茨城県
地域枠
8 19 18 7 2.4 2.6
山形県
地域枠
2 9 9 2 4.5 4.5
東京女子医科 推薦 35 75 75 22 3.4
指定校 15 15 15 1.0
聖マリアンナ医科 指定校 15 49 49 16 3.3 3.1

私立大医学部一般入試の試験日は概ね1月末〜2月上旬に固まっており、物理的に受験できる学校の数は限られてしまうのが現状です。そのため、医学部合格のために少しでもチャンスを広げようと思うなら、推薦入試やAO入試に目を向けてみるのもひとつの方法です。

なかには、出身都道府県で出願できるかどうかが決まってしまう地域枠や、高校などで異なる指定校推薦枠もあり、全てに応募できるというわけではありませんが、自分が興味のある大学については早めに情報収集をしてみてください。

大学にもよりますが、推薦入試は10〜12月、AO入試は8〜12月と一般入試よりも早い時期に実施されます。高校3年生になった段階でどのような学校があるのか、自分が狙えそうなのはどの大学かなどをリサーチしたり、自分の高校にはどの大学の指定校推薦枠があるか確認をしたりするなど、学年が変わった時点で動き出す必要があります。

面接について

入試突破のためには面接も重要

医学部入試ではほとんどの大学が面接を課しています。もちろん、1次の学科試験を通過しないと2次試験の面接までたどり着くことはできませんが、医学部受験を考えるうえで面接対策は必須です。では、なぜ面接が重要なのでしょうか。実際の入試結果からその理由を考えてみましょう。

東京慈恵会医科大学 2016年度一般入試結果(大学公表値)から

  • 最終合格者 ………… 316人
  • 合格者最高得点 …… 346点(400点満点 86.5%)
  • 合格者最低得点 …… 246点(400点満点 61.5%)

東京慈恵会医科大学の今年度の入試結果を見ると、合格者最高得点と最低得点の間は100点離れており、この間に最終合格者の316名がいることになります。つまり、理屈上は同じ得点を取った受験生が平均約3人ずつ存在することになります。

しかし、当然ながら最高得点付近よりも最低得点付近の方が同じ得点を取った受験生が多く存在すると考えられるため、最低得点の246点前後にはおそらく十数名から数十名の受験生がひしめきあっているはずです。大学側も、学科試験で数点程度の差であるならば、より医師にふさわしく、より大学がほしいと思う受験生を合格にするでしょう。したがって、最終的に合否を決定づける面接は重要だと言えます。

もちろん学科試験で高得点を取ることが目標ですが、本番は何が起きるか分かりません。事前にしっかりと準備や練習をしておきましょう。

面接に向けてのポイント

  • 早いうちから「なぜ医者になりたいのか」を考え、自分の意見をまとめておく
  • 幅広い視野で社会を見て、自分の適性を見極めておく
  • オープンキャンパスに積極的に足を運び、大学の雰囲気を肌で感じておく
  • アドミッション・ポリシーを把握し、大学の求める学生像と自分が合っているかを考えてみる

アドミッション・ポリシーについて

アドミッション・ポリシーとは、「入学者受入れ方針」のことです。大学側がどのような学生を求めているのか、高校でどのような学力を身につけておいてほしいのかなどをまとめたものです。

これからの入試において、志望校のアドミッション・ポリシーを把握しておくことは重要です。なぜかというと、高大接続改革の一環として、各大学は文部科学省よりアドミッション・ポリシーの見直しをすること、そして2018年度以降の入試はその新しいアドミッション・ポリシーをもとに行うことが求められているからです。

また、面接においても大学への関心度をみるためにアドミッション・ポリシーを知っているか聞かれる場合もありますので、志望校のものはホームページやパンフレットなどでチェックしておくようにしましょう。