生物・難易度の5要素

入試問題の難易度 –生物編–

入試の難易度」の判定は悩ましいものです。例えば、ある大学の入試問題では易しい小問と難しい小問が混在し、「ある程度までは点数を取りやすい」が「ある程度以上の点数は取りにくい」ということがあります。また、「合格ギリギリの点数さえ取れればいい」や「他科目の苦手分も補いたい」など、それぞれの受験戦略によっても難易度の捉え方は変わってくるでしょう。このように、難易度を一概に論じることは難しく、対象や目的、目標を絞る必要が生じます。

さらに、最終的な評価・判定は主観の要素が大きいことも否めません。「難しさ」には様々な要素が絡み合っており、それらがどの程度影響しているかは、結局受験者本人の「解いた印象」として判断されます。そのためにも判断の根拠となる客観的な分析は重要です。共有できる客観的なデータを集め、最後は人が(経験や勘も含めて)判定を下す。こういった分析は医師の診断に通ずるところがあるかもしれません。

このページでは、「その大学の合格平均点を取りやすいかどうか」を目安として、難易度を以下の5つの要素に分け、評価を行いました。

生物・難易度の5要素
① 知識
② 論述
③ 読解
④ 計算
⑤ 考察

生物は問題文が長く、特に国公立大学などでは論述問題も加わります。そのため、他科目よりも時間がかかってしまう傾向が強く、作業量の多さが難易度に密接にかかわってきます。それに加えて、②~④は量が増えれば増えるほど、点数が取りにくくなります。素早くかつ正確に問題を解くことは大学によらず共通の対策といえるでしょう。

① 知識量

基準は、「○は教科書レベル、◎はそれ以上」ですが、国公立大学は、共通テストを含め、教科書を逸脱する内容まで覚える必要はありません。よってすべて○になっています。まずは教科書に載っている太字の単語を覚え、その単語について自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

◎になるのは一部の私立大学です。医学部では慶應義塾大学、昭和大学、聖マリアンナ医科大学など、医学部以外では早稲田の基幹理工系学部や先進理工学部(生命医科学科がある)などが該当します。これらの大学では、単語そのものを問われることはありませんが、大学レベルの生物学や病気に関する知識などを知っておくと解答しやすくなることがあります。

② 論述量

基準は500字としました。行数指定の場合、東大は1行35字(国公立大学で行数指定なのは東京大学のみ)で換算し、枠指定の場合は解答から逆算することで概算してあります。

1問当たりの字数は、100字が一つの目安となります。一つのまとまった文章を書かせる場合100字指定が多く、想定としては、内容の検討も含めて1問当たり約5分、上記の基準は論述で25分程度以上、全体の4~5割の時間を取られるというイメージです。100字より長い論述はあまり見られませんが、後期試験では散見されます。前期では、東京大学や大阪大学等の最難関大学に限らず、千葉大学、横浜市立大学、岡山大学、高知大学、琉球大学等、地方国公立大学でも出題されます。

論述問題の内容については、以下のように分類できます。

  1. 知識をそのまま説明する。
  2. 知識をもとに、要素の取捨選択や加工をして、問われている内容に即した形にまとめる。
  3. 実験結果のグラフやデータをそのまま文章で説明する。
  4. 仮説や予め提示された疑問点を踏まえ、実験結果から結論を導き出す。
  5. 現象のメカニズムや理由を、知識をもとに考えて説明する。

(1) から (4) の順に難度が上がって見えますが、 (3) を深読みしすぎずに素直に書けるようになれば、 (4) も無理なく解答できるようになります。一方、 (1) も字数に合わせて内容を調整する必要があるので、結局考察量はどれも大差ありません。 (5) に至っては、「~はなぜですか。」という単純なものから、実験の結論の生物学的意義を問うものまで幅広く出題されます。日頃から知っている知識を文章化したり、有名な実験の考察過程を説明したりして、文章を書く練習を積んでおきましょう。

③ 読解量

実際には、問題文の総文字数で比較するべきですが、試験本番の場で目安となるようページ数で比較しています。基準はB5で20ページ程度ですが、問題用紙のサイズや図表の量にも左右されますし、さらに試験時間によっても負担は変わってきますので、あくまでも目安です。

私立大学では、東京理科大学や慶應義塾大学看護学部は問題文が長いです。また、立命館大学や同志社大学など、関西の大学でここ数年増加傾向が見られます。

④ 計算量

生物の計算は、ほぼ四則演算の数値計算で、時々連立方程式や文字式の計算を用いる程度です。ただ、内容が割合(濃度や速度も含む)や場合の数・確率という、算数・数学の苦手な受験生が特に苦手な単元が多く、これらの単元の文章題と考えるとイメージしやすいでしょう。計算問題自体は、小問としては比較的多くの大学で出題が見られます。

◎の基準は大問1題相当の分量です。計算の中でも苦手意識を持つ受験生が多いのが遺伝だと思いますが、京都大学は、例年遺伝の大問が出題されます。名古屋大学は遺伝以外にも積極的に計算問題を盛り込んでいます。

私立大学では東京理科大学を始め明治大学や東京農業大学など、いわゆる難関大学~中堅の大学の理工学部や農学部など、特にマーク式で出題される大学で多く見られます。

⑤ 考察量

この部分に関しては、かなり主観的な基準になるといえるでしょう。イメージとしては「問題文(図表)を読んで、解答を書き始めるまでに、考えなければならないことがどれだけあるか」となります。例えば、共通テストの2021年(第1日程)の問題と2022年(本試験)の問題を解き比べるとわかりやすいかもしれません。前者は、選択肢の文章とグラフを直接突き合わせることができますが、後者は選択肢に解答がそのまま書かれておらず、「つまり…」とか「~だから…」など自分自身で導き出した解釈を挟む必要があります。

解答までの道のりが長いのは大阪大学です。東京大学であれば、数学でいう誘導問題に当たる小問を挟んで徐々に本質に迫るところを、大阪大学は丸投げともいえる勢いで、一気に核心の考察を要求します。名古屋大学や岐阜大学なども、論述が多いことから、一問一問しっかり内容を練り込む必要があります。

国公立大学の入試問題は、単純な知識だけで解答できるのはごく一部です。最初に知識を問いつつ、考察する問題が必ず取り入れられています。思考力・考察力は一科目だけで鍛えられるものではありませんので、国語や数学など他教科の学びから、論理的に考えたり表現したりする習慣をつけましょう。

2021年度入試問題 生物(医学部医学科)

【凡例】  ◎:特に要する  ○:平易  ×:不要

  • ※「○」の目安:大学入学共通テストの程度(①、③、④、⑤)、総字数500字程度以下(②)
  • ※ページ数について、紙の大きさは特に指定がない限りB5サイズとする。
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大学 解答時間
(2科目)
ページ数 難易度 分量 ①知識 ②論述 ③読解 ④計算 ⑤考察
北海道 150 19 C C
旭川医科
札幌医科 120 12 C C
弘前
東北 150 19 C C
秋田
山形 120 9 C C
福島県立医科 120 3 (B4) C C
筑波 120 14 C C
群馬
千葉 100 9 B C
東京 150 26 A A
東京医科歯科 120 9 C C ×
横浜市立 180 6 (A4) B C
新潟 180 15 D D
富山 180 19 C B
金沢
福井 120 8 (A4) C C
信州 150 6 (A4) C C
岐阜 120 11 (A4) B B
浜松医科 120 11 C C
名古屋 150 23 B B
名古屋市立
三重 150 16 D C
滋賀医科 150 9 (A4) C C
京都 180 21 A C
京都府立医科 150 8 C B
大阪 150 16 B A ×
大阪市立 150 8 D D
神戸 120 8 C C
奈良県立医科 180 (英数+理1) 17 D B
和歌山県立医科 120 18 (A4) B B
鳥取 180 16 C D
島根
岡山 120 9 D C ×
広島 120 14 D D × ×
山口 150 12 (A4) C C
徳島
香川 180 15 C C ×
愛媛
高知 120 6 D C ×
九州
佐賀
長崎 160 18 C C
熊本 120 12 (A4) D C
大分 120 6 D D ×
宮崎
鹿児島 150 12 D D ×
琉球 100 6 (B4) D D