2022年度 国公立大学医学部医学科の入試動向

第1段階選抜

2022年度国公立大学医学部医学科(前期)における第1段階選抜不合格者数は1,356人で、昨年度の953人を大幅に上回りました。これは他学部も含めた第1段階選抜不合格者(前期)全体の約45%を占め、医学部医学科出願者の約11人に1人は前期日程の2次試験を受けられなかったことになります。

第1段階選抜実施(前期)を予告した49大学のうち、不合格者が0人だったのは、

国立 北海道、旭川医科、弘前、秋田、山形、東京医科歯科、富山、金沢、信州、岐阜、浜松医科、神戸、島根、広島、山口、愛媛、高知、佐賀、宮崎、鹿児島、琉球
公立 札幌医科、京都府立医科、奈良県立医科

[国立]北海道、旭川医科、弘前、秋田、山形、東京医科歯科、富山、金沢、信州、岐阜、浜松医科、神戸、島根、広島、山口、愛媛、高知、佐賀、宮崎、鹿児島、琉球

[公立]札幌医科、京都府立医科、奈良県立医科

の計24校と、昨年度から5校減りました。一方、不合格者数上位5校は、香川(204人)、滋賀医科(163人)、岡山(157人)、群馬(103人)、福井(95人)でした。(以上、共通テスト科目不足等の失格者を含む。代ゼミ調査より)

第1段階選抜は共通テストの得点によって行われますが、ほとんどの大学では「志願倍率が○○倍(募集枠によって異なる)を超えた場合に第1段階選抜を行う」という実施予告であるため、出願状況によって実施の有無や合格最低点が変化します。

したがって、実施を予告している場合でも例年不合格者を出していない大学がある一方、前年度実施しなかった大学が実施することや、その逆もあるため志望大学の入試情報はしっかりとチェックしておきましょう。

受験校選択上の注意点

国公立医学部医学科の共通テスト必要科目は5教科7科目(東京医科歯科・後期のみ地歴公民を除く4教科6科目)です。1科目選択の地歴公民については、多くの受験生が負担の重い世界史Bや日本史Bを避け、地理Bもしくは公民を選択しようとするでしょう。ただし公民の場合、「現代社会」「倫理」「政治・経済」などの2単位科目では受験できる大学が半数以下に限定されるため注意が必要です。

大学別入試概況

※()内の数字=「指数」:2021年度の志願者数を100とした場合の2022年度志願者数を示す

前期

昨年度から募集人員を5人減らした北海道(93)が2年連続の志願者減ですが、志願倍率にはほとんど変化がありません。

横浜市立(88)は2次試験の理科の配点を変更したことで配点比率がより2次重視になりました。特に共通テストの平均点が低い年は2次重視の大学に志願者が集まりやすい傾向が見られますが、横浜市立は第1段階選抜の基準を750/1000点とやや高めに設定しているため、平均点のダウンが大きかった今年度に関しては基準を満たせず出願できなかった受験生も多かったと考えられます。

富山(102)は後期を廃止して前期の募集人員を10人増やしました。志願者数は昨年度から横ばいのため志願倍率はやや下がっています。

名古屋(43)は今年度から前期にも2段階選抜を導入したことで志願者数・志願倍率ともに大幅ダウンしています。

2022年4月に大阪市立と大阪府立が統合されてできた大阪公立(68)は、共通テストで難化した数学、理科の配点が非常に高く、志願者数が大幅に減少して志願倍率も2.8倍から1.9倍までダウンしました。

岡山(150)は配点比率を900:1200から500:1100に変更し2次試験の比重を高めたこと、また過去10年間第1段階選抜を実施していなかったことで志願者数が大きく上昇したとみられます。志願倍率は3.7倍から5.5倍へとアップしました。

宮崎(85)は昨年度志願者が大きく増加した反動に加え、募集人員を5人減らし、新たに2次試験に理科2科目を課したことで大幅な志願者減も予想されましたが、結果的には約15%の減少にとどまり、比較的高い志願倍率を維持することとなりました。

医学部医学科 志願者数・志願倍率〈前期〉

後期

募集人員20人を擁していた富山が後期募集を廃止し、岐阜が募集人員を25人から10人に減らしました。中部地方では後期の枠が35人分減ったことになります。

後期の2次試験で学科試験を課す大学は、旭川医科(英、面)、千葉(英、数、理2、面)、山梨(数、理2、面)、岐阜(英、数、理2、面)、奈良県立医科(英、数、理2、面)、宮崎(英、面)の6校です。(※岐阜は2023年度入試より後期廃止予定)

それ以外の11校の2次試験は小論文、面接、調査書などで基本的に共通テスト重視です。小論文対策なども必要になりますが、まずは共通テストで高得点を取らないと合格できる可能性のある大学が限定されてしまいます。

後期を廃止する大学が年々増加していることもあり、例年志願倍率(志願者数/募集人員)は後期全体で15倍以上になります。しかし、実際に受験する人数から算出される実質倍率(受験者数/合格者数)は3~5倍程度まで低下します。これは2段階選抜があることと、前期の合格者や私立大合格者が受験を辞退するためで、後期志願者のうち実際の受験者は約3割程度になります。

国公立大志望者にとっては前期よりも募集人員が少ないとはいえ、後期も数少ないチャンスの一つです。募集枠をしっかりチェックして、積極的にチャレンジするようにしましょう。