「2023東大入試状況」一覧
文三以外の全科類で第1段階選抜実施、文三は2001年度以降3回目の不実施
今年度は全科類の志願倍率が第1段階選抜予告倍率を上回りましたが、文三(3.02倍)は予告倍率の範囲内と同等であるとみなされ、文三のみ選抜が実施されず、それ以外の全科類で選抜が実施されました。
過去20年で最も多い志願者数だった理二は第1段階選抜不合格者も増加し、過去20年では2006年度に次いで多い不合格者数(428人)となっています。一方、志願者が減少した理一は、過去20年で2013年度に次いで少ない不合格者数(68人)でした。
2001年度以降でみると、文三は3回目(2002、2015、2023)の不実施で、全科類で最多の不実施回数となりました。文科は特に2013年度以降に文一・文二・文三各2回ずつ不実施の年度があるのに対し、理科は2016年度の理二が唯一の不実施で、それ以外はすべて実施されています。
志願者が減少すれば、今年度の文三のように第1段階選抜が実施されないケースが増えることになりますが、受験人口全体が減少する中で、東大の今年度の志願者は昨年度から減少したものの概ね例年と変わらない数が集まっています。科類ごとの志願者の多寡は生じるものの、第1段階選抜が行われるのが「珍しくはない」状態が続きそうです。
第1段階選抜合格者の平均点は上昇したが2021年度以前よりはやや低水準
昨年度は共通テスト難化の影響を受けて第1段階選抜合格者の平均点が大きく低下しましたが、今年度は共通テストの平均点上昇に伴い、合格者の平均点も約20~50点程度上昇しています。最も大きく上昇したのは文一(+50.20点)、上昇幅が最も小さかったのは文二(+19.72点)でした。昨年度は4科類で過去初めて700点を下回りましたが、今年度は2年連続の理三のみで、他の科類は700点を上回っています。
とはいえ、共通テスト初年度である2021年度やそれ以前のセンター試験時代の平均水準と比較すると、今年度の合格者平均点はやや低くなっています。東大受験者レベルでも以前より苦戦しているとみられ、共通テストでの高得点獲得が難しくなっていることがうかがえます。
第1段階選抜合格者の最低点をみると、昨年度より低下している科類もみられます。文科では、昨年度も得点率60%を下回るまで低下した文一が、今年度はさらに低下し50%台前半となり、低下傾向が続いています。
文科の合格者最低得点率の序列は、2019年度まで「定番」だった文三>文二>文一から2020年度以降様相が崩れ始め、2021・2023年度は第1段階選抜が実施されない科類があるなど不安定な状況です。今後も不安定で序列が定まらない状況が続く可能性が十分考えられます。
理科では、理一の最低点が昨年度からさらに大きく低下しました。合格最低点543点(60.3%)は2001年度以降で最も低い点数です。一方、唯一昨年度も上昇した理二はさらに大きく上昇しました。合格最低点711点(79.0%)は概ね2019年度以前の平均水準と同等です。近年、理科の中で理二の最終合格最低点が低い状態が続いていることなどにより、志願者が流入した影響が及んでいると考えられます。
また理三は第1段階選抜予告倍率を約3.5倍から約3.0倍に引き上げたこともあり、最低点の昨年度からの上昇幅は全科類の中で最も大きくなりました。昨年度の合格最低点は2001年度以降の最低値でしたが、今年度は面接が復活した2018年度以降では最も高くなっています。
理科の合格者最低得点率の序列には、はっきりとした規則性はみられません。2018年度以降は理三が最も低い状態が続いていましたが、今年度は理三が理一を上回り理二>理三>理一という序列でした。特に理一と理二は、共通テストの得点や前年の第1段階選抜・最終合格最低点などの影響で相互に流出入が起きやすく、今後も年度によって序列が変化すると思われます。