京都大学大学院 総合生存学館(思修館)総合生存学専攻 大嶌幸一郎 教授

京都大学大学院 総合生存学館(思修館)総合生存学専攻 大嶌幸一郎 教授

京都大学大学院 総合生存学館(思修館)総合生存学専攻
大嶌幸一郎(おおしま こういちろう)教授

1975年京都大学工学研究科工業化学専攻博士課程修了、工学博士(京都大学)。専門は、炭素−金属結合をもつ有機金属化合物を用いた、イオン的・ラジカル的な反応の研究。著書に「基礎有機化学」(東京化学同人)・「有機金属化学」(丸善)・「現代有機化学ボルハルト・ショア」(訳、化学同人)など

受験生の皆さんへのアドバイス受験勉強を通じて、一生の財産となる
自分で考える力を養うこと

—— 以前ほどではないにせよ、京大の学風は今でも自由であり、それを支えているのが自学自習の精神であることに変わりはない。学生に対してうるさく言わないのは、相手を一人前として尊重しているからだ。そんな京大生を目指す人たちには、どんな覚悟が求められるのだろうか。

学生諸君に求めることは、一つしかありません。それは「とにかく自分の頭で考えること」です。何も考えず、教授の指示通りに動くような学生は伸びない。これまでに40人ほどドクターを育ててきましたが、私は、徹底して彼らに下駄を預けてきました。

実験科学の世界では、額に汗をかいて行う実験と、脳に汗をかく思考の両方が求められます。化合物AとBを混ぜる実験に同じように取り組んだとしても、頭の中で色々考えながら実験している学生と、ただ漫然と化合物を混ぜている学生の間には、1年も経つと大きな違いが出てきます。その差は、外から見ているだけではわかないけれども、成長度合いは確実に天と地ほども変わってくる。

私自身も、考えながら実験するのが生きがいです。かつて「生涯一捕手」と名乗ったプロ野球選手がいましたが、私も生涯一研究者を目指しました。だから、研究科長や工学部長として忙しくなってからも、夕方の5時からだけは自分の時間を確保し、実験を行って考えるパターンを変えませんでした。

考えることは、それほどまでに人を魅了するのです。受験勉強では暗記も重要かもしれませんが、ぜひ、自分の頭で考える習慣も身につけておいてください。

もう一つ、強調したいのが国語力の大切さです。理系の人間が、文系科目の国語を重視するのは、奇妙かもしれません。けれども、ものごとを考えるとは、要するに日本語で考えるのです。日本語を正しく使えなければ、そもそも論理的な思考は不可能。きちんとした文章を書けなければ、論文は成立しません。

一時、工学部で二次試験から国語を省いたことがあります。この間に入ってきた学生たちの日本語能力は著しく低下していました。だから、私は大学に直談判し、国語の試験を復活させたのです。もっとも、このときには入試担当の先生から、4千人もいる工学部受験者の国語の答案を誰が採点するんだとひどく怒られましたけれど(笑)。

受験勉強を通じて国語力をしっかり培い、自分の頭で論理的に考える力を養っておいてください。その力は、大学に入ってからはもちろん、その後の続く全人生で必ず役に立ちます。