Special Interview
京都大学大学院 経済学研究科
諸富 徹 教授
1998年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。主著に、「環境税の理論と実際」(有斐閣)、「私たちはなぜ税金をおさめるのか – 租税の経済思想史」(新潮選書)など。これまでに、内閣府「政府税制調査会」、飯田市「再生可能エネルギー導入支援審査会」等の委員を務める。
地球温暖化を筆頭に、公害や環境破壊といった社会問題が深刻化し、企業と環境問題の関わり方にますます注目が集まっている。さまざまな解決策が議論される中、その旗振り役を担う学問として位置づけられるのが経済学の応用分野の一つである環境経済学だ。諸富教授が世の中に提言しようとしているものは何なのか。これまでの研究と環境経済学の担う役割、そして京都大学を目指す学生に向けたアドバイスを伺った。
これからの社会と環境保全のために最善を尽くす
環境経済学が示す可能性
日本では、高度成長を経て1970年代に公害や環境破壊が社会的な問題となった。その後、1990年代ごろには地球温暖化をはじめとした地球規模での環境問題も多く議論されるようになった。地球全体が危機にさらされた場面では、公害のように特定の企業や工場に対応を求めるのではなく、さまざまな立場から環境保全について考えなくてはならず、それぞれの環境に対する意識も高めていく必要がある。
環境を守るために規制する方法を考えることは簡単だ。たとえば、地球温暖化をもたらすものは排出してはいけない、と取り決めることにより実現できる。しかし、このような極端な環境政策は経済成長をも拒んでしまう。
一見相容れないように見える環境保全と経済成長。しかし、環境経済学の知見を用いて、これらの両立を図ることができる。諸富教授によれば、「環境を改善しながら人々の生活水準の向上のために考える。開発された環境保全技術をいかに社会のシステムに組み込んでいくか、その仕組みを提案するのが環境経済学の役割である」という。つまり、社会における経済的な営みを維持あるいは発展させながら、環境を守る方法を追究するのである。環境経済学であれば双方を活かした見方ができる。