共通テスト科目別出題分析 一覧
物理の細かな知識を要求する設問は少なく、現象の定性的な理解と単純な計算で解答できる構成
出題の特色
- 公式の正確な知識を求める設問は少なく、物理法則の定性的な理解が求められた
- 数値計算の設問もあったが、計算の負担は軽かった。また文字式の計算も単純なものに限られた
- 第3問を演劇部の公演を想定した場面設定とするなど、見た目の工夫がされていた
設問概要・講評
2021年度に引き続き問題文の分量が多く、センター試験よりも負担が増しています。実験を取り入れた問題も2021年度に続き出題されていますが、2021年度は実験データの読み取りなど実験途中の場面を想定した設問が多かったのに対し、2022年度は実験結果を整理した図や記述が与えられる形式となり、センター試験に似た扱い方に戻りました。
- 第1問
- 小問集合で、問1~問3は力学、問4は波動です。物理法則を意味から理解できているかを問われました。また、与えられたグラフや図から、具体的な運動や現象を想定できることも重要です。
- 第2問
- 日常的な電気回路を題材に、抵抗を直列・並列接続したときの消費電力の大小や電力量の数値を問う問題です。高校受験でもよく扱われる題材です。
- 第3問
- 比熱、浮力、抵抗率の違いに着目して金属の材質を見分ける問題です。計算や公式の知識を必要とする設問も多少ありますが、ある物理量の大小によって実験結果が定性的にどう異なるかを問う設問が中心です。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 16 | 問1 | 4 | 相対速度 | 易 |
問2 | 4 | F-tグラフによる運動の考察 | 標準 | ||
問3 | 4 | 鉛直投げ上げ運動のエネルギー | やや易 | ||
問4 | 4 | 縦波 | 標準 | ||
第2問 | 16 | A | 8 | 電熱線の接続・消費電力 | 標準 |
B | 8 | ドライヤーの消費電力・消費電力量 | 標準 | ||
第3問 | 18 | 18 | 比熱、浮力、抵抗率の考察 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 30.4 |
2021 | 37.55 |
2020 | 33.29 |
2019 | 30.58 |
2018 | 31.32 |
2017 | 29.69 |
2016 | 34.37 |
2015 | 31.52 |
物理法則の本質的な理解と与えられた状況を読み解く力が求められる、融合問題中心の構成
出題の特色
- 公式頼りの計算よりは物理法則の本質的な理解と問題への対応力を試す、センター試験の特徴を引き継ぐ問題が中心
- 計算は文字式・数値計算とも負担が軽い
- 熱力学の設問が少なく、単振動や交流回路も出題されなかった。一方で原子分野の大問があるなど、出題分野・単元に偏りがある
設問概要・講評
問題数は2021年度と同様に大問4問構成です。2021年度の第2問・第3問はA・Bに分割して異なる単元から出題する形式でしたが、2022年度では分割はなく、一つの大問で幅広い分野を扱っています。煩雑な文字式の計算がないのは2021年度と同様ですが、2022年度は数値計算の負担も軽めです。現役生の学習が遅れがちな原子分野が必答問題として出題されています。
- 第1問
- 原子を除く4分野からの小問集合です。いずれの設問も見慣れた設定で基礎知識の理解を問う、センター試験の第1問と同様の出題形式でした。いずれも解答しやすいので、手早く処理して他の大問を考える時間を作れるとよいでしょう。
- 第2問
- 力学についての誤った仮説に反論するための実験について考察する問題です。問題の流れに不自然な箇所が多く、問いの焦点が分かりにくい設問があるなど、実力を発揮しづらい問題だったかもしれません。
- 第3問
- 電磁誘導を利用した速度計により台車の運動を測定する実験についての問題です。大部分の設問は電磁気分野の問いですが、力学分野の設問も2問あります。ある物理量を変えるとき、どのような影響が現れるかといった定性的な考察が必要です。
- 第4問
- 水素原子のボーアモデルを題材とした問題です。前半の2問は力学と電磁気の知識だけで解けますが、後半は原子分野の知識が必須です。なお、本年度は追試でも第4問全体が原子分野の問題となっています。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 25 | 問1 | 5 | 波の干渉 | やや易 |
問2 | 5 | レンズ | 標準 | ||
問3 | 5 | 力のモーメント | 標準 | ||
問4 | 5 | 内部エネルギーと状態変化・断熱変化 | 標準 | ||
問5 | 5 | 電流と磁場 | 標準 | ||
第2問 | 30 | 30 | 運動の法則の実験的検証・力積と運動量 | 標準 | |
第3問 | 25 | 25 | 電磁誘導 | 標準 | |
第4問 | 20 | 20 | 円運動・ボーアの原子模型 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 60.72 |
2021 | 62.36 |
2020 | 60.68 |
2019 | 56.94 |
2018 | 62.42 |
2017 | 62.88 |
2016 | 61.7 |
2015 | 64.31 |
2014 | 61.64 |
2013 | 62.7 |
従来通りの出題傾向。広く弱点なく学び、素早く正確に解くことが求められる。過去問を丁寧に演習すれば高得点が可能
出題の特色
- 出題の範囲、問題の問い方、必要とされる知識の深さなど、従来と変化なし
- 一つ一つの問題にかける時間が限られる。テンポよく解く必要あり
- 近年の傾向としてグラフを読み解くなど思考力が問われる
設問概要・講評
知識の範囲、難易度、グラフの読解など、2021年度とほぼ同じ内容です。過去問を一問一問丁寧に演習すれば高得点が可能です。また一問あたり平均2分弱しかかけられませんので、テンポよく処理していかなくてはいけません。正誤問題は大変よい学習の題材となります。選択肢を選ぶだけではなく、その際に「選ばなかった選択肢」についても丁寧に理解するように学習をしましょう。
- 第1問
- 問1は頭で処理せず電子式を描いてから解きましょう。問3は原子量や相対質量の定義を覚えているか、そこから踏み込み具体的な計算ができるか。問4は教科書の文章を丁寧に理解しておく必要があります。問8は身の回りの現象を酸化還元反応で理解することが求められます。問10はダニエル電池をゼロから説明できる必要があります。
- 第2問
- エタノールを題材にした総合問題です。グラフから多くの情報を読み取らなければなりません。傾きの意味、飽和の温度の意味など解説できるでしょうか。図2を用いて蒸留の結果を予想できるでしょうか。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 30 | 問1 | 3 | オキソニウムイオンの構造 | やや易 |
問2 | 3 | 18族元素の性質 | やや易 | ||
問3 | 3 | 同位体 | やや易 | ||
問4 | 3 | セッケン | 標準 | ||
問5 | 3 | 酸の定義 | やや易 | ||
問6 | 3 | 酸の電離と中和反応 | やや難 | ||
問7 | 3 | 中和滴定 | 標準 | ||
問8 | 3 | 身近な物質 | やや易 | ||
問9 | 3 | 物質量の計算 | 標準 | ||
問10 | 3 | 電池のしくみ | 標準 | ||
第2問 | 20 | 問1 | 4 | エタノールの性質 | やや易 |
問2 | 4 | 温度変化を表すグラフの考察問題 | やや難 | ||
問3 | 12 | 分別蒸留の考察問題 | やや難 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 27.73 |
2021 | 24.65 |
2020 | 28.2 |
2019 | 31.22 |
2018 | 30.42 |
2017 | 28.59 |
2016 | 26.77 |
2015 | 35.3 |
問題数は減少したが、やや難化。試行調査に似た形式の問題が出された。見たことのない題材に対応する思考力が必要
出題の特色
- 「難問に特有の要素」が盛り込まれており、昨年までの共通テストとは全く別次元
- 捨て問を意識していれば得点の低下は抑えられただろうが、満点を目指した受験者ほど逆に失点が広がったはず
- 難関大学の受験生にとって、2次試験を2回受けたことと同じだった。2023年度は共通テストであっても捨て問を意識すべき
設問概要・講評
計算の量や文章の量自体は2021年度並みでした。しかし、複数の問題に、ひっかけ、妙な設定、深い理解の要求など、難関大学2次試験と同じ要素が盛り込まれていました。「難易度が従来と同程度と予測し、高得点が必要と考え満点近くを狙おうとした受験生」は大きく点数を落としたでしょう。2023年度もこの傾向が続く場合、捨て問を的確に選ぶ演習も必要です。
- 第1問
- 問3は二種の気体の分圧を変数として自分で決め、気体の密度を求め、関数の形を予測するべきですが難しいです。問5も癖があります。気体の物質量比が変化することが多いため、混乱したでしょう。
- 第2問
- 問2は弱酸遊離に気づかないといけません。問3では電離の計算で近似してはいけません。問4(a)は水素吸蔵が気体の溶解と同じように扱えます。問4(b)は出題ミス。厳密に考えると混乱する悪問です。
- 第3問
- 問2は酸化反応の原子の物質量比をグラフから求める問題ですが、データの与え方が目新しいです。問3はソルベー法の上辺の反応のみでなく、個々の反応の意味まで問われました。
- 第4問
- 問4が目新しく、2か所が還元される反応の途中を考えなければなりません。問4(b)はさらにその物質からの分子内環化に気づく必要があります。
- 第5問
- 二重結合の酸化分解を活用した構造決定は難関大学の2次試験レベルの理解が必要です。反応熱を求める問題も癖がありました。二酸化硫黄の生成熱を自分で仮定する必要がありました。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 20 | 問1 | 3 | 電子配置 | 易 |
問2 | 3 | 窒素含有量 | 標準 | ||
問3 | 4 | 混合気体の圧力と密度の関係 | 標準 | ||
問4 | 3 | 非晶質の性質 | やや易 | ||
問5 | 7 | ヘンリーの法則 | やや難 | ||
第2問 | 20 | 問1 | 3 | 化学反応や物質の状態変化での熱の出入り | やや易 |
問2 | 3 | 電離定数 | 標準 | ||
問3 | 3 | 平衡定数と反応速度定数との関係 | 標準 | ||
問4 | 11 | 水素吸蔵合金と燃料電池 | 標準 | ||
第3問 | 20 | 問1 | 4 | ミョウバンと塩化ナトリウムの性質 | 易 |
問2 | 4 | 金属酸化物の組成を求めるグラフの読み取り | 標準 | ||
問3 | 12 | アンモニアソーダ法 | 標準 | ||
第4問 | 20 | 問1 | 3 | ハロゲンを含む有機化合物 | 標準 |
問2 | 4 | フェノールのニトロ化 | 易 | ||
問3 | 4 | 高分子化合物 | 易 | ||
問4 | 9 | ジカルボン酸の反応 | 標準 | ||
第5問 | 20 | 問1 | 4 | 脂肪族不飽和炭化水素の構造 | 易 |
問2 | 16 | アルケンのオゾン分解 | やや難 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 47.63 |
2021 | 57.59 |
2020 | 54.79 |
2019 | 54.67 |
2018 | 60.57 |
2017 | 51.94 |
2016 | 54.48 |
2015 | 62.5 |
2014 | 69.42 |
2013 | 63.67 |
単元が限定された選択「生物」。文章読解や実験考察が多く、理系と同等の思考力が求められる
出題の特色
- 全大問がA・Bの中問に分かれていた。各分野において複数の単元から出題
- 小問ごとに異なる実験を行う場合が多く、考察量が多い
- 出題の形式・傾向が「生物」に近い。同等の対策が必要
設問概要・講評
分量は2021年度と同程度ですが、やや難化しました。単純な知識問題がなく、知識は文章読解などで活用される点や実験考察が多い点など、「生物」の形式や傾向と一致しており、質的な「難化」といえます。理系と同等の対策が必要ですが、センター試験の過去問も単元を選別すれば利用できるので、有効に活用しましょう。
- 第1問
- Aは酵素とATPに関する知識問題。問3も実験を行っていますが実は知識問題です。Bは会話形式のリード文による実験考察。小問ごとに異なる実験の考察を行います。
- 第2問
- Aはヘモグロビンに関する複数の実験考察問題。問2は典型的な酸素解離曲線を活用します。Bは免疫に関する実験考察問題。問3は実は知識問題。問5は血清療法をしっかり理解していないと誤答してしまうため注意しましょう。
- 第3問
- Aはバイオームの変化と食物連鎖についての実験考察問題。 Bは物質循環に関する読解問題。いずれも基本的な知識をもとに、問題文に従って考えて解答します。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 19 | A | 9 | ATP、酵素 | 標準 |
B | 10 | DNAの抽出実験 | 標準 | ||
第2問 | 16 | A | 7 | 酸素の運搬 | やや難 |
B | 9 | 免疫 | 標準 | ||
第3問 | 15 | A | 9 | バイオームと生態系 | やや難 |
B | 6 | 窒素循環 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 23.9 |
2021 | 29.17 |
2020 | 32.1 |
2019 | 30.99 |
2018 | 35.62 |
2017 | 39.47 |
2016 | 27.58 |
2015 | 26.66 |
センター試験を踏まえ、今後につながる共通テスト生物の「標準」。難易度設定も適切で、知識・実験とも思考力を試す良問ぞろい
出題の特色
- 2021年度と比べて難化。それ以前のセンター試験とほぼ同程度に戻った
- 「過不足ない組合せを選ぶ」問題が、知識問題だけでなく、実験考察問題でも出題
- センター試験に近い内容・形式の問題もあり、センター試験の過去問演習も対策に有効
設問概要・講評
すべての大問に実験考察が盛り込まれ、さらに知識問題も単に用語を問う形式は見られず、複数の知識を組み合わせたり活用したりしながら、文章や資料を読み解く問題になっています。
センター試験にもあった分野横断的な出題もあり、暗記的な学習では太刀打ちできません。センター試験の過去問も活用しながら思考型の問題に慣れておきましょう。
- 第1問
- ヒトと類人猿の系統関係を題材とした、分子時計や分子系統樹の考察問題。問3は計算するだけではなく、その結果から考察しましょう。
- 第2問
- キク科の草本と病原菌との関係を実験や観察、資料をもとに考察する問題。A問1は計算を簡略化するために、いかに概算するかがポイントです。Bはトランスジェニック植物の作成実験。
- 第3問
- 発生に関する知識問題と実験考察問題。問1はHox遺伝子の細かい知識が必要。問3・5は、リード文全体を理解した上で、新たに必要な実験を考えましょう。
- 第4問
- アリの行動に関する実験考察。以前のセンター試験では頻出の分野で、考え方のポイントも近いです。問2は「フィードバック」の正確な理解が求められます。
- 第5問
- 被子植物による動物の利用をテーマに、分野横断的な出題。問3・4は実験考察。前者は結論から実験を考え、後者は実験から結論を導きましょう。
- 第6問
- 植物の種子形成に対する低温の影響をテーマに、植物の生殖や植物ホルモンなど分野横断的に出題。問3は複数の文章や実験結果を総合して正誤を検討する必要があります。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 12 | 12 | ヒトの進化 | やや難 | |
第2問 | 22 | A | 8 | 植物と病原菌 | やや難 |
B | 14 | トランスジェニック植物 | 標準 | ||
第3問 | 19 | 19 | 肢芽の形成 | やや難 | |
第4問 | 12 | 12 | アリの道しるべフェロモン | 標準 | |
第5問 | 16 | 16 | 被子植物の組織、連鎖と組換え、光走性と遺伝子 | 標準 | |
第6問 | 19 | 19 | 植物の生殖と植物ホルモン | やや難 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 48.81 |
2021 | 72.64 |
2020 | 57.56 |
2019 | 62.89 |
2018 | 61.36 |
2017 | 68.97 |
2016 | 63.62 |
2015 | 54.99 |
2014 | 53.25 |
2013 | 61.31 |