共通テスト科目別出題分析 一覧
史資料問題が豊富に出題された。従来のセンター試験を踏襲する一方で、読解力と知識を使い分ける臨機応変さが要求された
出題の特色
- 史資料問題は増加したものの、精読必至な問題と単なる知識で解ける問題が明確に分かれていた。下線部にも注意する必要あり
- 西アジア・東南アジア史に関する問題が増加。受験生の対策が不十分になりがちなオセアニア史からも3問出題
- 資料や会話文の情報をもとに人口密度を算出させるなど、実践的な思考力を試す問題も見られた。統計資料にも慣れておきたい
設問概要・講評
旧来のセンター試験特有の4択正誤判定問題が増加する一方、時系列などの年代整序問題は出題されませんでした。地図問題は増加しましたが、難易度が下がった印象です。西洋史よりは東洋史、特に東アジア以外からの出題が増加しており、引き続き網羅的な対策が求められました。2021年度に比べ、要求される知識の難易度は上がりましたが、読解に時間のかかる問題は減少しました。
- 第1問
- 古代~中世の東アジアを中心とする出題でした。問1は下線部の内容を確認しないと解けない問題です。問9は歴史学の史料研究をテーマとして、思考力を試す問題でした。
- 第2問
- 近現代の欧米史を中心とする出題でした。問4のように、頻出度の高い世界史用語はむしろ文中で伏せられる傾向にあります。
- 第3問
- 近代の欧米・アジア史を中心とする出題でした。問5は人口密度を計算する必要があります。問7は読解のみで解くことができる問題でした。
- 第4問
- 近現代史を中心に幅広い地域から出題されました。問3では歴史評価の多面性が問われ、相反する見方の根拠を選ぶという問題でした。
- 第5問
- 中世ヨーロッパ史・近世アジア史を中心とする出題でした。Aは文章と図案をもとに、Bは会話文をもとに解く問題でした。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 27 | A | 9 | シーボルトの東アジア研究 | 標準 |
B | 9 | 9世紀のイラン系知識人の伝記 | 標準 | ||
C | 9 | 王国維の周辺民族観 | やや難 | ||
第2問 | 15 | A | 6 | チャーチル『偉大な同時代人たち』 | 標準 |
B | 9 | ケネディ「平和のための戦略」演説 | 標準 | ||
第3問 | 24 | A | 9 | 日本の政治小説に見る国際情勢 | 標準 |
B | 6 | 世界の人口の推移 | 標準 | ||
C | 9 | オセアニアの先住民 | 標準 | ||
第4問 | 17 | A | 8 | オーウェル『カタロニア賛歌』 | やや難 |
B | 9 | イリヤ・レーピン「イワン雷帝とその息子」 | 標準 | ||
第5問 | 17 | A | 9 | サン=ドニ大修道院の墓棺群 | 標準 |
B | 8 | 中華街の関帝廟 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 65.83 |
2021 | 63.49 |
2020 | 62.97 |
2019 | 65.36 |
2018 | 67.97 |
2017 | 65.44 |
2016 | 67.25 |
2015 | 65.64 |
2014 | 68.38 |
2013 | 62.43 |
センター試験や2021年度共通テストに比べ、かなり難化。正確な知識理解はもちろん、史料の丁寧な読み込みや思考力が要求された
出題の特色
- 史料問題が多く出題され、丁寧な史料の読み込みや、思考力・判断力が要求された
- 会話文などにも解答のヒントが隠されており、リード文にも注意する必要があった
- 単純な用語暗記にとどまらない歴史事象に対する正確な理解が従来に増して求められた
設問概要・講評
設問数は2021年度と同じ32問でした。従来にも増して正確な読み取りを要する史料問題がいくつも出題され、中には史料の性格なども考慮に入れなければならないものもありました。年代整序問題や正誤問題に関しても、歴史事象に対する正確な理解が求められており、総じて2021年度よりも難化したといえます。また、文化史からの出題が少なかったことも2022年度の特徴です。
- 第1問
- 姓や個人名をテーマとした出題。問1はメモをヒントに姓と苗字の違いを理解できるかが、問5の昭和の男性名に関する問題は西暦年を意識して学習できているかが解答のカギ。
- 第2問
- 古代の法をテーマとした出題。問4の年代整序は難問。「令条の期の後」をヒントにⅢが延喜式であると判断します。
- 第3問
- 中世の海と人々との関わりがテーマの出題。日朝貿易に関する問4は史料全体を丁寧に読まないと誤答します。
- 第4問
- 近世の身分をテーマとした出題。問4は都市の野非人に関するもので、設問文から史料の性格を押さえる必要があり、難問であったといえます。
- 第5問
- 日本とハワイの関係をテーマに出題。問3の年代整序は、Ⅲの防穀令事件がやや細かい知識でした。
- 第6問
- 鉄道の歴史をテーマとした出題。問2は提示された時刻表の作成時期に注目できたかが解答のカギ。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 18 | A | 9 | 古代~近代の姓・苗字 | やや難 |
B | 9 | 古代~近現代の個人名 | やや難 | ||
第2問 | 16 | 16 | 古代の政治・外交・社会・文化 | 標準 | |
第3問 | 16 | 16 | 中世の政治・外交・社会・経済 | 標準 | |
第4問 | 16 | 16 | 近世の社会・文化 | 標準 | |
第5問 | 12 | 12 | 近代の外交 | やや難 | |
第6問 | 22 | A | 13 | 近代の政治・社会・経済 | やや難 |
B | 9 | 現代の政治・社会・経済 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 52.81 |
2021 | 64.26 |
2020 | 65.45 |
2019 | 63.54 |
2018 | 62.19 |
2017 | 59.29 |
2016 | 65.55 |
2015 | 62.01 |
2014 | 66.32 |
2013 | 62.13 |
図表の的確な分析に至る正確な知識が求められている。2021年度と比べて判定に迷う問題は減り、取り組みやすくなった
出題の特色
- センター試験から出題されていた河川の氾濫や雪崩など、自然災害の発生しやすい時期や地域が問われる問題が定着
- ジェントリフィケーションの地区を選ぶ問題など、地図から地域性を判断する問題が出題
- 地誌(ラテンアメリカ)の大問は2021年度と同じくA、Bに分割されて構成され、一方は他地域との比較だった
設問概要・講評
大問数は5問、小問数は30問と変化はありませんでしたが、回答数は31に増加しました。設問文および選択肢の文字数は10,000字程度で、2021年度より2,000字ほど少なかったですが、問題量自体に大きな変化はありませんでした。2022年度からの新形式として、共通の四つの選択肢から二つの問う対象が異なる選択肢を一つずつ選ぶ問題が1問ありました。
- 第1問
- 世界の自然環境や自然災害に関する問題でした。日本や世界の地形や気候、自然災害について図表や統計をもとに判断する能力が問われました。
- 第2問
- 持続可能な資源利用についての問題でした。エネルギー資源の分布と消費量、二酸化炭素排出量、循環型社会への取り組みなどが問われました。
- 第3問
- 村落・都市と人口に関する問題でした。村落の景観の変化、公共施設の分布、ジェントリフィケーション、欧米の主な空港、人口動態などが問われました。
- 第4問
- ラテンアメリカについての問題でした。河川の流量、エネルギー消費、ブラジルの輸出品、所得階層、チリとニュージーランドの比較などが問われました。
- 第5問
- 北海道苫小牧市の地域調査でした。地図の読図、旧新地形地図の比較、室蘭港との比較、製造業、人口ピラミッド、地方都市の課題などが問われました。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 20 | 20 | 世界の自然環境や自然災害 | 標準 | |
第2問 | 20 | 20 | 資源と産業 | 標準 | |
第3問 | 20 | 20 | 村落・都市と人口 | 標準 | |
第4問 | 20 | A | 13 | ラテンアメリカの自然と社会 | 標準 |
B | 7 | チリとニュージーランド | 標準 | ||
第5問 | 20 | 20 | 北海道苫小牧市とその周辺の地域調査 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 58.99 |
2021 | 60.06 |
2020 | 66.35 |
2019 | 62.03 |
2018 | 67.99 |
2017 | 62.34 |
2016 | 60.1 |
2015 | 58.59 |
2014 | 69.68 |
2013 | 61.88 |
倫理分野は2021年度と同様の出題形式で解答しやすい問題が多かった。政経分野では特に経済分野で意欲的な出題が目立った
出題の特色
- 倫理分野の難易度は標準的で良心的な出題。選択肢の文が長いものもあるが、全体として読解量はそれほど多くはない
- 政経分野の政治分野は専門的資料が減少しやや易化。経済分野では意欲的な出題が散見されやや難化
設問概要・講評
倫理分野は2021年度と比べると難化しましたが、それでも標準的なレベルの出題がほとんどでした。少し難しい問題も消去法で正解にたどり着けるようになっており、受験生の勉強量が得点に反映される出題でした。政経分野は全体的な難易度は標準的ですが、経済分野で教科書の内容をより深く学習する必要のある出題が散見されました。
- 第1問
- 議論することをテーマに東西源流思想からの出題。問4が資料を二つ読むもので新しい形式ですが、難しくはありません。
- 第2問
- 理想をテーマに日本思想からの出題。問2は本居宣長について踏み込んだ理解が必要です。問3の安部磯雄はやや細かい出題です。
- 第3問
- 考えることをテーマに西洋思想からの出題。問3のヘーゲルについて深い理解を求める問題でした。
- 第4問
- 世代間倫理や環境問題など、現代倫理からの出題。問1、問4は読解量がやや多めです。
- 第5問
- 国の法制度や地方自治からの出題。問2は資料集などでの詳細な知識が必要となります。
- 第6問
- 経済主体に関する出題。問1の時事的な「巣ごもり需要」、問6のいわゆる「ビッグマック指数」が目新しい出題です。
- 第7問
- 地方自治に関する出題。問3は自主財源と依存財源の正確な理解がないと難しいかもしれません。
配点・出題内容・難易度
大問 | 配点計 | 小問 | 配点 | 出題内容 | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
第1問 | 12 | 12 | 「議論」の意義 (東西源流思想) |
標準 | |
第2問 | 12 | (1) | 3 | 「理想」のあり方 (古代における日本思想) |
標準 |
(2) | 3 | 「理想」のあり方 (近世における日本思想) |
やや易 | ||
(3) | 6 | 「理想」のあり方 (近代における日本思想) |
標準 | ||
第3問 | 12 | (1) | 3 | 考えることについて (西洋近代思想その1) |
標準 |
(2) | 3 | 考えることについて (西洋近代思想その2) |
易 | ||
(3) | 6 | 考えることについて (西洋近代思想その3) |
標準 | ||
第4問 | 14 | 14 | 未来世代に対する責任 (現代の倫理、青年期、心理学) |
標準 | |
第5問 | 19 | 19 | 国の法制度や地方自治 (政教分離訴訟、農業の法制度、民泊など) |
標準 | |
第6問 | 19 | 19 | 経済主体と関係図 | やや難 | |
第7問 | 12 | 12 | 地方自治 | 標準 |
※難易度は絶対評価
平均点の推移
年度 | 平均点 |
---|---|
2022 | 69.73 |
2021 | 69.26 |
2020 | 66.51 |
2019 | 64.22 |
2018 | 73.08 |
2017 | 66.63 |
2016 | 60.5 |
2015 | 59.57 |
2014 | 67.29 |
2013 | 60.68 |