秋田喜代美教授インタビュー

探求学習や地域活動を推薦入試で評価
入学した学生がゼミでも活躍

高校生の皆さんは、決まった知識を覚えたり、学んだりすることが学習の中心だと思っている方が多いかもしれません。現在は高校でも探究学習の時間が増えていますが、大学に行くと学びはさらに大きく変わります。「生徒」から「学生」になるだけでなく、学問―つまり問い方を学びます。学生それぞれが自分の問いを見つけて、どうやって探究するか、自分がおもしろいと思った分野で何が動いているか、それが社会の様々な側面とどのようにつながっているかを学ぶことができるのです。

東京大学では2021年度入試から、学校推薦型選抜(推薦入試)の枠が広がりました。教育学部の推薦入試では、探究学習のレポートで評価するなどしており、それぞれの強みを活かした活動をしてきた高校生がチャレンジしています。推薦入試で入学してきた学生はゼミでも活躍しています。高校の時に探究的な地域創生や、教科横断的な学習をしてきたことは、大学でも活かせるのです。都市型の進学校出身でなくても、たとえば地方の高校でリーダーとして生徒会活動をしてきた経験や、地域で行ってきた活動も活きると思います。

また、大学には留学生も多く、いろいろな人に出会えます。特に東京大学の場合は、グローバルなレベルで何が最先端なのかがわかります。さらに、研究型大学なので、学部生であっても様々な研究をしている先輩たちの姿を近くで見ることができます。研究の世界は、自分が努力した分だけ客観的に評価されるので、個人の着想、発想がとても大切です。オリジナリティーが大事にされ、研究によってその人の価値を認めてくれる。成果が知財として、論文や本、作品として残っていく世界です。これを間近に見られるのは東京大学ならではでしょう。

東京大学は大きな大学と思われがちですが、個別の研究室ではとても親密な師弟関係や仲間関係が築かれており、この点が進路にも大きなメリットになります。先輩たちがこれまでの140年以上の歴史の中で培ってきた社会的な信頼や、ネットワークは大きなものがあります。直接会ったことがなくても、同じ場所で学んだという感覚でつながっていけるのが大きな魅力だと思います。

教育学部では、男女比が6対4とほぼ男女同数に近づいていますし、女性の教員も25%を占めています。こうした環境だからこそ、私も自分の学んできた経験を生かしながら居心地よく学び直せたのだと思います。ただ、私が女性として初めて東大の学部長に就任したという事実はその通りなのですが、男性だから、女性だからというより、「その人らしくやっている」と見てもらいたいですね。教育学部の女性教員たちはみな、自分の研究や仕事でオリジナリティーを発揮してきた結果として、ここで教員をしている、と考えています。男女ではなく、その人自身の仕事を見てほしいと思います。