文学散歩【6】図書館焼失と芥川龍之介

90年ぶりの赤煉瓦

本郷キャンパスには関東大震災の痕跡はほとんどない、と前回述べたのだが、2014年のある時期だけ、震災で焼失した旧図書館の跡を目にすることができた。それは現在進められている「新図書館計画」の工事の過程でのことであり、総合図書館正面前の広場を掘削すると、旧図書館の基礎部分が現れたのである。「新図書館計画」とは、この広場の地下に新館を建設するというもので、竣工は2019年の予定。

工事中の総合図書館正面前の広場

工事中の総合図書館正面前の広場
手前左に赤く見えるのが旧図書館の基礎煉瓦。(2014年8月撮影)

現・総合図書館は、ジョン・ロックフェラーJr.からの400万円の寄附を財源に建設され、昭和3年[1928]12月に竣工した。その位置は旧図書館があった場所のやや南寄り(赤門方向)で、「新図書館は大震災前の薬物、生理二教室の地を占め、旧図書館の南に位し、正面玄関は北に面す」と『東京帝国大学五十年史』にある。旧図書館の焼け跡は埋め立てられて広場となり、90年後に再び日の光を浴びたわけである。