株式会社DeepX代表取締役 那須野薫氏インタビュー

株式会社DeepX 代表取締役 那須野薫氏

株式会社DeepX 代表取締役 那須野薫氏

1990年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、同大学大学院工学系研究科修士課程で工学系研究科長賞を受賞し、修了。東京大学松尾研究室で、ビッグデータ解析、機械学習、ディープラーニング技術の応用研究等、幅広い研究開発に従事。
博士課程在籍中の2016年4月、人工知能技術を応用して社会課題の解決に貢献したいという思いから、「DeepX」を創業。

どこにいれば自分の能力が高まり、世の中に貢献できるかを考える

人手が足りない分を、自動化することで人がいなくても成り立つようにする。その自動化の技術の一つとして大きな期待を寄せられているのがAIなのです。

現在私たちは、建設業界ではゼネコン企業とともに「油圧ショベルの無人自動操縦」、食品業界では加工工場の「パスタの定量盛り付けの自動化」に取り組んでいます。どちらも「人の手でないと難しい」とされている作業です。こうした課題をAIの技術によりクリアできれば、国内の働き手不足を解消することができます。

DeepXの技術により、無人で掘削作業をおこなう油圧ショベル

ものづくり産業をAIで変えていくのは、なかなか難しいことですが、やりがいはあります。それには「大義」があるからだと思います。私は今年で30歳になりますが、まさに「失われた30年」の只中を生きてきて、未来の働き手不足は、わたしたち自身の課題です。このまま日本が衰退したら年金すらもらえるかどうかわからない。国際社会でのさらなる競争力の低下も免れ得ない。この状況をなんとかして発展させたい。インターネットの世界では勝てなかったけれども、日本には強いものづくり産業が数多く存在する。そことAIをかけ合わせて、世界に挑戦したい。そういった大義があるんです。そこに取り組むのですから、やりがいがないわけがありません。

私は、「起業」は幸せになるための手段の一つだと思っています。幸せになるなら、仕事というのはなんでもいい。そういう意味で、すべての人に起業をすすめるわけではなく、その人が幸せになれる仕事を選ぶのがいいと思っています。ただ、長い目で見て、どこにいれば最も自分の能力が高まって、世の中に対して貢献できるのかを考えるのは大事なことだと思っています。

たとえば、昔より変化のスピードが早いいま、意思決定に時間がかかる大企業では、世の中の流れに遅れてしまう面もあります。とはいえ、十分な人員がいて社員一人に負荷がかからないことや、責任ある立場になるまでに時間がかかるためゆっくり成長できるという、いい面もあります。また、大企業であっても、こういった大企業にありがちな特性をうまく理解して、若いうちから責任ある立場を任せ、大きなことにチャレンジできるところも多くあります。そういった企業の特性を理解し、さらには企業によって異なる個性も見比べてみる。進路を考えるうえでは、自分の置かれた状況を踏まえてベストな判断ができればいいと思いますが、できるだけ若いうちにチャレンジしたほうがいいとは感じています。

チャレンジするには、その素地、土台を築き上げる必要があります。数学や考える力、論理的に述べる力などといった素地がないと、そもそも挑戦の舞台に立てないのです。私はたまたま修士2年のときに、すごくいいチャンスが目の前にきたので飛びつきました。しかし、そのとき準備ができていなかったら、飛びつけなかった。せっかくのチャンスなのに生かせないのは、もったいないですよね。だから、学生のうちにきちんと学んでおいて、自分が魅力を感じられるチャンスが来たら、すぐにそれを生かせるように準備しておくこと。それが大事だと私は考えています。