株式会社DeepX代表取締役 那須野薫氏インタビュー

株式会社DeepX 代表取締役 那須野薫氏

株式会社DeepX 代表取締役 那須野薫氏

1990年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、同大学大学院工学系研究科修士課程で工学系研究科長賞を受賞し、修了。東京大学松尾研究室で、ビッグデータ解析、機械学習、ディープラーニング技術の応用研究等、幅広い研究開発に従事。
博士課程在籍中の2016年4月、人工知能技術を応用して社会課題の解決に貢献したいという思いから、「DeepX」を創業。

ものづくり×AIで日本が抱える課題を解決したい

当時、AIが社会で活用されていた事例としては、アドテック(広告×AI)やフィンテック(金融×AI)が有名です。私自身、修士課程のときに、それらの共同研究に携わったこともあります。「いつ、誰が、何を買うのか」がAIによってわかる。それがわかると売り上げが上がる。この仕組みは面白いとは思いました。しかし、よくよく考えてみると、そこでやることは「クリック予測」、つまり、いつ、誰が、どんなタイミングで何をクリックするのかを予測することです。この分野での企業を考えたとき、私にとっては、学んだことの行きつく先が「クリック予測」であることが、なんとなく腹に落ちませんでした。フィンテックもアドテックも、もちろん立派な仕事です。ただ、自分の人生の30年、40年をかけて取り組む仕事でないのではないか。私にはそういう気がしていました。

修士課程で学びながら、私は人生についていろいろと考えていました。そのときにこう思ったのです。

「最後、つまり死ぬときに『ああよかったな』と思えるような仕事に取り組んだほうがいい」と。だから、自分の長い人生をかけて仕事をするなら、自分自身が納得できるチャレンジをしたかったのです。

では、なぜ、「DeepX」を起業しようと思えたのか。これには、きっかけがあります。2015年の終わりに松尾先生に次のようなお話をうかがったことです。

日本は、この20~30年に急成長したグーグルやアマゾン、フェイスブックなどのインターネット産業にうまく入っていけませんでした。経済は成長せず、「失われた30年」ともいわれます。一方でそのインターネット領域でデータを大量に集められるようになったことと、計算資源がたくさん用意できたことで、AIの世界は劇的に進歩してきました。つまり、インターネットに強い企業がそのまま AI に強いという図式があります。

では、その領域で後れをとってしまっている日本はどうしたらいいのか。そう考えたときに、インターネット領域やAI領域単体で戦うのではなく、日本が強いとされている「ものづくり」の領域とAIをかけ合わせたらいいのではないか。そこにチャンスがあるのではないか——。

松尾先生からこのお話をうかがったとき、私はものすごく「腹落ち」したのです。日本のものづくり産業にAIを導入することで人手のかかる作業を自動化し、生産現場の課題を解決する。そして日本から世界の生産現場を革新する。それを目指し、「DeepX」を立ち上げました。

現在の日本では、あらゆる産業において働き手が不足しています。統計によれば、国全体の生産年齢人口が2040年には約2割減ることがわかっています。多くの国では出生率改善や女性の社会進出、移民等によりこの問題を解決してきましたが、日本は風土的にそうなりそうもありません。その解決策が「自動化」です。

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