科類ごとの増減や倍率の動き
科類ごとの増減をみてみましょう。前回よりも志願者が増えたのは文科一類のみで、他の5科類は全て減少しています。東大においても、以前は志願者の増減に隔年現象の傾向がありましたが、近年は状況が変わっていて、増加や減少が連続する事例もみられます。顕著な例が文科では一類と三類で、一類は2017年度から3年連続の増加ですが、一方の三類は3年連続の減少となりました。志願者の増減に影響する要因としては、前年の志願者の増減や志願倍率の高低もありますが、これまでの状況をみると、前年の第1段階選抜の最低点が最も大きく影響しているようです。文科一類は過去2年の最低点が63~65%と低水準であったのに対し、三類は過去2年ともに文科の中で唯一80%を超えていたことも3年連続の増減につながったと考えられます。【図表①③⑤参照】
文科は各年度の倍率変化が目立ちます。年度により志願倍率の序列が変化しており、高低の規則性はありません。第1段階選抜の実施倍率が約3.0倍で共通であることも、各年度の志願倍率が大きく変動することの一因です。倍率変化が最も大きいのは、やはり最難関の文科一類です。例えば、2009年度の4.10倍→2010年度の3.15倍、また2012年度の3.97倍→2013年度の2.92倍など、大幅な倍率ダウンも見られます。2013年度に志願倍率が大きくダウンしたのは、前年の2012年度で志願倍率と第1段階選抜の最低点が文科の中で最も高かった影響です。また2013年度以降では、文科三類の倍率変化も比較的大きくなっています。2013年度と2016年度はいずれも倍率のアップが目立ちます。【図表①③参照】
理科については、3つの類ともに志願者が減少しました。一類と二類は隔年現象の減少ですが、三類については今回で3年連続の減少です。前回の2018年度は2次試験に面接を復活させたことで敬遠され、また今回の2019年度は第1段階選抜の予告倍率を約4.0倍→約3.5倍に縮小したことが要因です。全ての国公立大医学部医学科前期の志願者数は全体で約4%の減少ですが、理科三類の減少率は10.0%で、医学科前期全体を大きく上回るものとなっています。理科は文科と異なり、第1段階選抜の実施倍率は類ごとに変わります。一類が約2.5倍、二類と三類が約3.5倍です。この実施倍率の高低と募集人員の規模(最多は一類の1,108人、最少は三類の97人)に連動して、理科については3つの類の「志願倍率の序列(三類>二類>一類)」ができています。類ごとの志願倍率の推移をみると、文科一類と同様に、最難関の理科三類は募集人員が少ないこともあって倍率変動が顕著です。2010年度からの10年間の倍率は2011年度の5.65倍から2019年度の4.18倍の範囲で、年ごとの変化が大きくなっています。前述の通り今回の2019年度については、第1段階選抜の予告倍率縮小の影響で、この10年間では最低の志願倍率となりました。一方で一類は、募集人員が約1,100人と規模が大きいため、人数として多少の増減はあっても、倍率の変化は例年小幅です。【図表①④参照】