2016年7月16日(土)および9月3日(土)に、代々木ゼミナール・Y‐SAPIX共催セミナー「東大を語る」を開催しました。
第1部では、東大の教育システムに着眼してお話ししました。入学後の学びやカリキュラム概要のみならず、そこから東大を貫く精神を分析することにより、入試の担う役割について考えました。第2部では、入試に焦点を当て、今年度の入試概況から合格に必要な学力を検討し、今後の学習指針を示しました。第3部では、さらに志願者全員に関わる英語科に的を絞り、入試問題の特徴や次年度入試へ向けた効果的な学習方法を提案しました。
大学入試の基本方針となるのはアドミッション・ポリシーです。また、そこで掲げられている「求める人物像」は、その大学の教育理念に見合う人を明らかにしたものです。そして、入試には入学者への想いが反映されています。
入学後の教育システムは、入試と深くリンクしています。大学が発信している情報を捉えることは、入試に向けて対策を練る上で重要な戦略の一つです。
教養教育と進学選択
教養教育への想い
東大特有の教育システムといえば、1・2年生の教養学部前期課程と進学選択でしょう。
1990年代、あらゆる大学が教養部を廃止していく一方、東大は学部としての教養教育を堅持し続けました。東京大学の特徴の一つは、この教養教育であり、前期課程における「教養学部」です。
教養学部の設立は、人間として偏らない知識をもたせ、真理探究の精神を植えつけなくてはならないという使命感に裏付けられています。初代教養学部長・矢内原忠雄はこうした営為を“教養学部の生命”と呼びました。
どの科類に進もうと、1・2年生は皆“教養学部生”です。東大が「文系・理系にとらわれない」学習意識を持った入学者を求めるのも、教養教育に重きを置く精神に通ずるところがあります。
レイト・スペシャリゼーション
東大生は3年生になってはじめて専門的な学部学科に進みます。これを「レイト・スペシャリゼーション(遅い専門化)」といいます。1・2年生の教養教育で学問的素地を養い、広い視野と総合的な基礎力をもって専門分野の学習へと進みます。
科類によって有利不利はあるものの、所属に関わらず広く選択肢が与えられています(全科類枠)。一方で、直属の学部を希望しても、条件を満たせずに進めないこともあります。
進学選択の際は、1・2年生の履修内容が非常に重要です。あらかじめ希望する学部がある場合は、必要な点数・履修要件を抑えておかなくてはなりません。教養課程における講義が自分の進路を見極める材料にもなります。1・2年次から、一つひとつの講義を大切に、有効活用していきましょう。
1・2年次から心掛けたい進学選択のコツ
- 志望学部に近い講義を受講してみる。
- 気になる学問を専攻している先輩に話を聞いてみる。
- 興味のある本は幅広く読んでおく。
- さまざまな経験を積むなかで、自分が進む学問分野について考えるきっかけをつくる。
科類と科目選択の関連性
※二重線は、受け入れ人数の多い、主たる進学先を表します。