京都大学大学院理学研究科久家慶子教授インタビュー

理学部では何を学ぶ?「理学」は自然科学の総称

あまり知られていないのは、地球のことだけではありません。私が所属している理学部も、一般的にはよく知られていないようです。京大の中でも、「理学部って何をしているの?」と思っている人はいるでしょう。もしかすると受験生やその親御さんには、「謎の学部」と思われているのかもしれません。

理学というのは、物理学、化学、天文学などを含んだ自然科学の総称です。私がいるのは、「理学部・理学研究科」の「地球惑星科学専攻」。この専攻の中には、「地球物理学」と「地質学鉱物学」という二つの分野があり、私は前者に所属しています。名前の通り地球を、物理学を使って調べています。そしてこの中の「地震学」の研究室にいます。

理学部・理学研究科の中には、「地球惑星科学」の他にも、「数理科学」「物理科学」「化学」「生物科学」があります。理学部の学生は3年生になるときに、どこに所属するかを決めることになります。受験のときには、先のことまで決められないという学生も多いはずです。理学部の学生であれば2年間、自分が何を深く学びたいのかをじっくり考える時間があります。これは大きなメリットと言えるでしょう。

地球惑星科学を専攻するために、高校のときに地学を学んでいる必要はまったくありません。私自身、高校では物理と化学を学んでいました。そもそも「地球惑星科学」なるものがあるなんて、多くの人は知らないでしょう。高校では習わない学問だからです。もちろん高校で学んだ科目を大学で深掘りするのも楽しいと思いますが、ちょっと新しいことに挑戦してみたいと思う人もきっといるはずです。

私は学生のうちに、知識の引き出しにインデックスをつくってほしいと願っています。新しい学問を学ぶということは、そのインデックスを大幅に増やすことです。知識は、0からつくることは難しい。でも、0.01でもいいので知識の種が自分の中にあれば、それが考えるきっかけになったりするものです。今は関係ないと思う話も、「そういうことがあるのか」と頭のどこかの引き出しに入れておくことは、とても大切なことです。

授業のときには、学生がすぐには理解できない内容も取り上げます。ただ、そうした自分にとって新しい言葉や概念を、後から調べるためのキーワードとして「頭の中のどこかに残しておいてね」と学生には伝えています。それらのキーワードは、皆さんの頭の中の引き出しのインデックスとなります。

もちろんその引き出しは、人生の中で一度も使わないかもしれません。でももしかすると、すごく困ったときに、役立つかもしれない。新たなアイデアが、その引き出しから生まれるかもしれません。これまでにはなかったインデックスがついた引き出しがたくさん頭の中にあれば、将来役に立つ場面がきっとくるはずです。京大理学部は1学科制で、自分で自由にカリキュラムが組めます。分野をこえたさまざまな引き出しを増やすには、うってつけのところです。

研究者の仕事は女性に向いている。研究に必要なのは楽しめるかどうか

私は研究者という仕事は女性に向いていると思っています。現在の社会では、少しずつ変わってきてはいるものの、女性はサブ的な立場に置かれてしまうことがあります。しかし、研究においてはそのようなことはありません。研究の何が楽しいかといえば、自分が主導できることです。自分が主体となり、自分が「不思議だな」と思うことを調べることができる。女性だからできない、ということはないのです。

もしかすると、理系の研究者になるには天才的な才能がないといけない、というふうに思ってはいませんか?そのようなことは一切ありません。研究を楽しんで、続けることができるか。それだけです。

私自身、研究をすることがすごく楽しいし、だからこれまで続けていられるのだと思います。不思議なものを調べてみたいという気持ちがあるなら、躊躇せず理学部へ足を踏み入れてください。そこには、不思議を解明するための様々な方法が揃っています。

理学部には不思議を解明するための様々な方法が揃っていると語る久家教授

ある意味、「謎の学部」と思われているのは正解かもしれません。なぜなら私たちは、日々、研究という名の謎解きをしているからです。推理小説や冒険ゲームが好きな人は、理学部が向いているかもしれません。地球の秘密を探る冒険の旅に参加してくれるみなさんを、京都大学でお待ちしています。

※本インタビューは「2023東大京大AtoZ」(2023年7月 SAPIX YOZEMI GROUP発行)に掲載されたものです。