理科の出題概要・学習アドバイス

2022年度 東大2次出題概要・学習アドバイス

出題内容・配点・試験時間

配点・試験時間
配点 試験時間
物理 2科目
120点
2科目
150分
出題内容
大問 出題内容
第1問 力学(万有引力と潮汐)
第2問 電磁気学(磁場中を運動するコイル)
第3問 熱力学(半透膜、気体分子運動論)

出題概要・分析

力学(万有引力と潮汐)、電磁気(磁場中を運動するコイル)、熱力学(半透膜、気体分子運動論)。題材は3題とも見慣れないものですが、指針は問題文に説明されています。

ただ、解答時間の割に読解量が多く、一方で解答用紙は狭いため、必要な説明を素早く読み取って瞬発的に考えをまとめる力が必要となります。2016年度以前は簡潔な問題文で自由な思考力が問われましたが、出題傾向が大きく変わったので、近年の過去問演習が重要です。

学習のポイント

物理の理解を定着させるためには問題演習が不可欠です。最初は典型的な解き方を真似すればよく、次は立式だけヒントを見て計算は自分で行うようにすれば公式の運用力がついてきます。問題を自力で解けるようになれば、答えの物理的な意味を考えたり、別解がないか検討したりすると理解が深まります。そしてこの段階を乗り越えた受験生は、時には難問にじっくり取り組むのもよいでしょう。

出題内容・配点・試験時間

配点・試験時間
配点 試験時間
化学 2科目
120点
2科目
150分
出題内容
大問 出題内容
第1問 Ⅰ油脂の構造決定
Ⅱアルケン・アルコールの反応・構造決定
第2問 Ⅰ発熱量とCO₂排出量
Ⅱ錯体・プルシアンブルーの結晶構造
第3問 ⅠCO₂の回収・貯蔵
Ⅱ抗原抗体反応の反応速度と平衡

出題概要・分析

東大は問題文が長く、高校の化学では扱わない題材も扱われますが、問題文で説明されています。文章で書かれているヒントを、素早く正確に読み取れる能力が必要です。2022年度の問題はいずれも難関大学で繰り返し出題されているテーマばかりなので、演習量の多さが有利に働く問題です。

有機分野では、新しい反応や考え方を問題文で紹介・解説し、それを活用させる問いが頻繁に出されます。読解力と理解力があれば対応は可能ですが、既知であればなお有利です。無機分野では、化学反応式の係数が整数とはならない反応の計算が特徴的で、2022年度も出題されています。

また、二酸化炭素に関する総合問題は東大らしい「思考力」を問う問題です。例えば、海水中に二酸化炭素を放出した際の挙動が大変細かく文章で説明されています。その情報を用いて予測される現象を表わすグラフを選択しなくてはいけません。持っている知識と考え方を用いて、「因と果と観測される事象」へとつなげられるかどうかが問われており、今後もこの傾向が続くでしょう。抗体の問題は、ミカエリスメンテンの解析手法と全く同じであることに気づくことができれば容易です。

学習のポイント

化学に必要な能力を大胆に分類すると以下のようになります。

① 簡単な問題をより速く解く能力
② 一見複雑に見える問題を単純化し理解できる能力
③ 大量の情報から問題を解くために必要な情報を拾い出す能力
④ 一見関係ない情報を、因果を考え自分で多段階に繋げる能力

また、それぞれの能力を伸ばす対策を概説すると次の通りです。

能力①
広い分野を網羅する問題集やテキストを繰り返し解きます。あまり新しい問題に向かわずに同じ問題を繰り返すことが重要です。
能力②
すでに解ける演習問題を「他の人に解説」できるようにしましょう。自分が解けることと、それを人に解説することは似て非なる能力です。
能力③
能力②を鍛えると自然に身につきます。問題を解く過程とは化学の現象を理解する過程です。解法を美しく解説できるようになると、王道の流れが身につき、必要な情報の繋がりが見えるようになります。
能力④
これも能力②を鍛えることにより、単純な論理が組み合わさっていることを見抜けるようになります。

年度によって変わるところもありますが、東大では特に②と④の能力が求められるので、それを身につけることが重要です。

出題内容・配点・試験時間

配点・試験時間
配点 試験時間
生物 2科目
120点
2科目
150分
出題内容
大問 出題内容
第1問 動物の行動、遺伝子発現
第2問 光合成、植物の反応、細胞
第3問 発生、細胞、遺伝子発現

出題概要・分析

2022年度は2021年度に比べて分量・難易度ともに増加・上昇した印象です。また、生物の問題は思考力重視ですが、その出題は未知の題材による考察問題が基本的です。

その中でも1990年以降の新しい研究を題材とした出題は、東大の2022・2021年度では下表のテーマが挙げられます。難関な大学ほど新しい研究成果を積極的に扱っており、思考力を測るために「新しいネタ」を探そうとする傾向は今後も続くと思われます。

入試年度 出題テーマ 研究年
2022 オプトジェネティクスによる記憶の想起 2013
光合成を行う細菌の休眠移行過程 2015
ノッチシグナル伝達 2010
2021 クマムシの乾眠誘導を起こす遺伝子 2015
タバコのCaイオンによる環境応答 1997

学習のポイント

思考力は一朝一夕で身につくものではありません。特別な対策、特効薬や攻略法はなく、日頃どれだけ考える問題を解いているかが表れます。一方で知識は必須です。知識がなければ考えることはできません。

そのため、単元学習を進めるのと並行して問題演習を行い、知識の定着と思考力の育成を同時に進める必要があります。当然、単元を一通り網羅した段階では、知識は不完全、思考力も標準レベルの問題を解いて身につけたレベルです。より難しい問題を解くためには、反復して知識を確認しつつ、問題の難易度を段階的に上げて取り組む必要があります。さまざまな難関大学の過去問に数多く触れ、未知の内容を理解する読解力や実験を読み解く考察力、明解に説明する論述力を繰り返し鍛えておきましょう。

もう一点意識すべきは時間です。生物は解くのに時間のかかる科目です。特に論述問題の解くスピードは影響が大きいので、必要な情報を漏れなく盛り込み、かつ時間を切り詰めて手早くまとめる練習をしておきましょう。もう1科目との時間配分も大事です。しっかり戦略を立てて本番に臨みましょう。