2022年度 東大2次出題概要・学習アドバイス
出題内容・配点・試験時間
- 配点・試験時間
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配点 試験時間 英語 120点 120分 - 出題内容
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大問 小問 出題内容 第1問 (A) 要約 (B) 空所(英文)補充 第2問 (A) 自由英作文 (B) 和文英訳 第3問 (A) リスニング (B) (C) 第4問 (A) 誤文指摘 (B) 英文和訳 第5問 長文読解
出題概要・分析
全体
2021年度は入試問題に登場する英文の量がやや少なく、難易度もやや低かったのですが、昨年と比べて難化しています。ただし昨年が易しかっただけで、難易度は例年並みです。入試対策をする場合は昨年の問題を参考にするよりも、2022年度の問題を参考にしたほうが実際の難易度に近くなる可能性が高いため、効果的な勉強をすることができるでしょう。
第1問(A)
全体的に難化している2022年度の入試問題の中で、最初に注目すべきは第1問(A)の要約問題です。これは英語の長文を読み、その内容を70字から80字の日本語でまとめなさい、という問題ですが、難しかった理由のほとんどは指定されたその字数です。
まず英文を正しく読めなければ、重要な内容を英文から効率よく抽出できず、その結果、重要な内容がたくさんあるように思えるような文章です。なんとなく読んで、なんとなく書いてしまうと、解答は80字以内に収まらないはずです。
したがって接続詞や段落構造といった英文読解の技術を使って、重要な部分を適切に絞り込む必要があります。また絞り込みに成功したとしても、今度は日本語の文を効率的に組み立てることができなければ、抽出した内容を指定された字数以下の日本語にまとめることができません。英語を読み取る力も、日本語を書く力も求められているという点で、この要約は難しいといえます。
ここで明確にしておく必要があるのが、東大の第1問(A)にパターン的な解法はない、ということです。正確にいうならば、パターン的な解法はあった、というべきでしょう。「段落ごとにまとめれば得点できる」などパターン的な解法が打ち立てられるたびに、東大はその解法が通用しない出題へと変化させてきました。この事実から分かるのは、東大が「パターン的な解法をなぞることしかできない、考えることをやめた受験生は求めていない」ということです。
ただしパターン的ではなくとも、解法はあります。東大の要約は段落・接続表現の二つを使って解く、という点は初期の東大入試から一貫しているからです。この二つに加えて助動詞にも注目することができれば、東大の要約を解く準備は完了です。これらの道具を具体的にどう使えばよいかを考えることが第1問(A)にとって重要です。
第5問
また難しい問題としてもう1つ挙げなければならないのが、第5問の物語文です。この英文は随筆と表現したほうが正確かもしれないような、筆者の心情が書かれた英文です。
しかし3ページにわたる英文のうち、3ページ目を読むまで、何の話をしているのか明確には分かりません。筆者が抱えている問題の話をしているのは分かるのですが、問題、あるいは症状の具体的な名前が明かされるのは3ページ目の最終段落です。
しかも問題の具体的な名前であるgenderqueerという単語が明かされても、これは受験生にとって知らない単語である可能性が高いでしょう。少なくとも、誰でも知っているような単語ではありません。やはり東大で出題される文章らしく、知っているだけでは得点できず、文脈をしっかり読んで考える必要があります。
そこで、合成語であるgenderqueerが、gender「性」とqueer「ふらふらする」からできていることと最終段落に至るまでの内容を考えると、genderqueerが「自分の性に対する自覚が、ふらふらと流動的な人」だと推察できます。
この問題で求められているのは何かということを考えると、それは強いていえば、最初は分からなくても最後まで読み通すという姿勢、つまり理解できないものでも理解できるようになることを信じて、学びに取り組む姿勢かもしれません。
学習のポイント
東大の入試で求められる英語力は、決して入試の最高峰ではありません。より難しい単語や文法を課す大学はたくさんあります。その代わり東大ではリスニングも含めた4技能の、幅広い英語力が求められます。さらに英語力以外でも日本語を書く力を求められ、極めつけは未知のものでも恐れず積極的に取り組む姿勢が求められます。これらの事実を考えると、英語の先生でも東大の英語で得点できない人がいるという事実も納得できるでしょう。
東大を志望する受験生へのアドバイスは明確です。自分の実力から、少し上の本を読んだり、少し上の問題に自ら取り組んだりしてみましょう。今の自分に理解できる本や、解ける問題をいくら解いても成長はありません。自分の実力よりも少し上、というのがポイントです。ぜひ理解できるようになった自分、解けるようになった自分を信じて挑戦してみてください。