上野千鶴子氏インタビュー

学生が教師を選べるのは大学だけ

いまの高校生は、大学を選ぶときに「何を学びたいか」ではなく偏差値で決めているでしょう?今は大学側もインターネットなどで熱心に情報発信していますから、もっと教育内容を調べてほしいですね。各大学が取り組んでいる研究分野や、そしてその研究に取り組んでいる個性的な研究者の情報は、以前よりもっと容易に入手できるようになりました。というのも、あらゆる教育機関の中で、学生が教師を選べるのは大学しかありません。自分の人生の中で4年間という貴重な時間を過ごすのですから、もっと探索して進路を決めてほしいと思います。進路指導の際、模擬試験の偏差値だけを参考にするケースもあるようです。偏差値だけを頼りに進路指導をして、入学できたら終わりではありません。学生に対して、その後の人生に対するビジョンをもって学校側には指導してもらいたいと思います。

以前、京都大学で集中講義を頼まれたとき、京大生から「センセ、東大生と僕ら、どう違う?」と聞かれてむっとした経験があります。東大生と比べてどうする、そんなプライドのないことを言うな、と。いつの間にか、京大生には自分たちが“全国ナンバー2である”という意識が染み付いていたのでしょうか。私たちの時代には考えられない現象です。

がんばって受験して、希望の学部学科に入れなかったとしても、自分の所属と“やりたいこと”は何ら関係ありません。他大学の「この人は」と思う先生のゼミに自らコンタクトを取るなど、いくらでも学ぶ方法はあります。また、やりたいことが見つからなければ周囲に目を向けてみてください。世の中、“謎”に満ち溢れているではありませんか。高校生なりの視点でよいので、そこから解きたい問題を見つける努力をしてください。自分の問いは自分で解くしかありません。その答えを導き出す知を身に着けられるのが大学という場所です。

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現在、関心を持っている研究テーマは介護と性暴力だという上野さん。2000年の介護保険の施行をきっかけに「介護」に関心を持つ。一方、「性暴力」として主に取り上げているのは、1990年代のドイツ滞在時からライフワークとしてきた「慰安婦」問題だ。被害証言の聞き取りと広範囲な資料の発掘により、現在も研究が進んでいる。これからも“被害者なき犯罪”に苦しむ女性と向き合っていく。