2021年1月に大学入学共通テスト(共通テスト)が実施されますが、国立大はどのように利用するのでしょうか。国語と数学に課される記述式問題と英語の活用について、その方向性と留意すべきポイントについて説明します。
❶ 記述式問題利用の基本形
2017年11月の試行調査で提示された国語の記述式問題では、高校生にとって身近な「生徒会部活動規約」と5人の会話文を題材にして、テキストを読み取る力、条件に応じて表現する力が求められています。記述式の問題数は、文字数80〜120字程度の問題を含め3問程度、試験時間はマーク式とあわせて100分を想定しています。(現行のセンター試験は80分。)また、数学の記述式問題は、「数学Ⅰ」の範囲から大問の中にマーク式と記述式が混在される形式で3問程度の出題とし、試験時間は全体で70分を想定しています。(センター試験は60分。)
国立大は、この共通テストの記述式問題を「一般選抜」の全受験生に課す方針です。試験結果の具体的活用方法は各大学・学部が主体的に定めるところですが、国語は段階別成績表示を点数化してマーク式の得点に加点(例えば、配点が国語全体の2割程度)することが基本形です。点数化されることになれば、より正確な自己採点が求められます。実際の採点結果とズレが生じれば出願校決定が難しくなるでしょう。
記述式が加わることで、試験時間内に自分の解答を書き残す時間を余計に作らなければいけません。あとで自己採点して何点取れたかを知るためには、普段から模擬試験などテストで自分の答案を書き残す習慣をつけることも必要でしょう。記述式問題への対応時間を十分確保するためには、国語であればマーク式部分の特に「評論文」「小説」の読解スピードを速めることも重要になります。複数のテキストや資料をすばやく読み解く力が求められるでしょう。
さらに、個別試験(2次試験)でも「記述力重視」の方針を打ち出しています。すでに、個別試験で記述式試験を実施している大学についても、複数の素材を活用し、自分の考えをまとめ表現する力を評価する作問への改善がはかられることになるでしょう。また、大学の求めに応じて、大学入試センターが記述式問題と採点基準を提供し、各大学が個別試験問題として活用する方法も検討されています。このように共通テストに加えて各大学の2次試験でも難易度の高い記述式問題が増えることになると、受験生の負担が大きくなると考えられます。
❷ 英語認定試験は全受験生に課す方針
共通テストの英語試験(筆記とリスニング)は実施され(2023年度までの予定)、民間業者の資格・検定試験で条件の合うものを「認定試験」として併用する方針です。
認定試験の各試験の成績は、CEFR(セファール)と言われる外国語力を測る一本の物差しによって大学入試に利用されます。主に大学入試で利用されるレベルはA2〜B2が中心となるでしょう。また、認定試験の受験期間と回数は、高3の4月〜12月までの2回と定められる予定です。従って、例えば「中学生の段階で、A2レベルまで到達し、大学受験の段階ではB2レベルにまでもっていく」といった中学・高校を通して段階を踏んだスコアの目標設定が大事になります。
大学の実施方法は、各大学・学部の判断で「共通テスト」と「認定試験」のいずれか、または双方の組み合わせで評価されることになります。国立大は、共通テストの英語認定試験を「一般選抜」の全受験生に課す方針です。試験結果の活用方法は、① 一定水準以上の結果を出願資格(例えば、A2以上)とする ② 共通テストの英語試験の得点に加点(例えば、点数をCEFR対照表に基づく水準ごとに定め、配点が英語全体の2割以上)、この ① ② いずれか、または両方を組み合わせて活用するとしています。加点する場合の配点は各大学・学部で異なることが考えられ、また2次出願前に自分の「持ち点」も分かるわけで、認定試験のスコアが低い場合は出願にも影響がでる場合もあるでしょう。英語の試験結果が出願校選択の重要な要素となってきます。
大学がどの認定試験を使うのかは、各大学・学部の判断となります。認定試験によって、出題形式・構成、検定料、実施会場数、年間実施回数等が異なりますが、スコアアップのためには、同じ試験の受験回数を増やして問題傾向に慣れていくことも必要です。さらに、「話す相手が(感情の分かる)人か(ただ単に言語を吹き込む)機械かどちらが良いか?」スピーキング解答形式の違いも重要です。
2018年8月には英検®CBT(Computer-Based Testing)の運用が始まります。今後、CBT方式の試験が一般的になると、学年の早い段階から音声吹き込みに慣れることやタイピング技能の習得も必要になってきます。
2006年度より導入されたセンター試験のリスニングは、2018年度入試で過去最低の平均点(100点満点換算で45.3点)となりました。一部に音声が例年より低音で聴きにくかったという感想もありました。2018年2月〜3月に実施された英語(リスニング)試行調査では、アメリカ英語以外の読み上げがありましたが、次回(2018年11月)実施の試行調査でもイギリス人や英語を母国語としない人による読み上げで実施される可能性があります。また、読み回数についても、1回読みと2回読みが混在している問題で実施し、引き続き読み上げ回数の検討が行われる予定です。なお、英語(筆記〔リーディング〕)については、4技能を問う民間試験との併用となることから、発音、アクセント、語句整序の問題は削除され、「読むこと」の能力を問う問題で引き続き実施検証が行われます。
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
おわりに 今から準備できること
これからの入試に備えて、今から心得ておきたいことは次の2点になります。
❶ 読解力と記述力
基礎的読解力を身に付けるためには、日ごろから教科書を丁寧に読む、分からないところを読み飛ばしたり、雑に読まないように気を付けることが大切です。また、読書量が小中学校と比べ高校になると減少する傾向にあるようですが、高校生になっても読書量を維持し、さらに自分の考えをまとめ表現し、小論文が書けるようになることを目標としてください。読める人は書ける、と言われます。数多くの良書に触れることは、記述力向上に大きく役立ちます。
❷ 英語発信力
小中学校の次期学習指導要領によると、「英語教育の早期化」と「英語4技能強化」の方針が打ち出されています。小学校は、2020年度に全面実施となりますが、英語は移行期間中の2018年度より先行実施されています。こうした施策により英語4技能の底上げがなされ、大学入試においてもスピーキングやライティングの比重が高まってくることでしょう。英語4技能を総合的に身につけるために、民間の資格・検定試験のスコアアップを努力目標に段階を踏んで学習することもよいでしょう。また、オンライン英会話を活用して、多様な国の人々と話す経験と積むことも重要です。
依然不透明な部分もありありますが、2018年度中に各国立大より利活用の基本方針が発表される予定です。志望校の入試情報には注意するようにしてください。