「まさかり高校プロジェクト」ーむつ市から東大へー/東大合格者に聞く

東大合格者 大塚小麦さんに聞く

「まさかり高校プロジェクト」に参加し、むつ市から30年ぶりの東大合格者となった大塚小麦さん。東大合格の軌跡とプロジェクトについてお話を聞きました。

青森県立田名部高校から東大理科二類に合格した大塚小麦さん

―東大を目指したきっかけは何ですか。

大塚 小さい頃から動物が好きで動物に関わる仕事がしたいと思っていました。中学校に入学して勉強を頑張っていたら、最初のテストで一番の成績が取れた経験から、自分は勉強が得意かもしれないという自覚をもつようになり、得意なことを生かしたいと思って獣医学部を目指すようになりました。その中で、家族で北海道大学のオープンキャンパスに行き、母から勧められたこともあって、最初は北海道大学の獣医学部を漠然と志望していました。

志望校を東大に変えたきっかけは、高校1年生の最初の模試の結果が返ってきたときに、当時の担任の先生に「東大を目指してみない?」と勧められたことです。それまで東大というものについて全く考えたことがなく、別世界のことのように思っていましたが、先生から言われて初めて意識するようになり、自分でも手が届くかもしれないと思うようになりましたね。

―大学受験で意識していたことはありますか。

大塚 高校1、2年生の頃はひたすら部活に打ち込んでいたので、家に帰ると疲れてすぐ寝てしまって、勉強時間はあまり確保できていませんでした。ですが、学校のテストだけは、一番になろうという意気込みで臨んでいました。教科書の内容を深く理解してわからないところがないようにする、というのをモットーに、学校のテストや模試で間違えた問題は納得できるまで解説を見るなど、わからないところを潰すことを徹底していました。受験勉強を本格的に始めたのは高校3年生からでしたが、それまでの勉強の積み重ねにより、基礎がしっかり身についている状態で受験に向けた対策を始められたと感じています。

―「まさかり高校プロジェクト」への参加を振り返ってみてどのように感じていますか。

大塚 「まさかり高校プロジェクト」に参加したのは高2からです。プロジェクトでは代々木ゼミナールの講師による特別授業を受けられたり、東大の先輩や卒業生の方が学校に来て話をしてくれたり、実際に東大に赴いて「FairWind」(地方高校生の進学支援をする東大学生団体)の方と話したりといったことを経験しました。それまでは、東大の入試問題の難易度や東大生のイメージがつかめないまま、ただがむしゃらに勉強するだけだったので、とても刺激になりましたね。特に印象に残っているのは国語の船口明先生(代々木ゼミナール講師)です。それまで私は文章の読み方・問題の解き方がわかっていなかったんですが、最初の授業で「どんな問題でも論理的に解答できる」と丁寧に教えてくださったことで、国語に対する考え方が大きく変わりました。授業を受けてからは国語が得意だとまで思えるようになり、入試では得点源にすることができました。

今振り返ると、このプロジェクトのすべての経験がプラスになったと思います。プロジェクトに参加していなければ、受験に対する具体的なイメージをもてないまま勉強し続けるしかなく、合格できていなかったかもしれません。取り組みの一つひとつが刺激的で、参加するだけですごくモチベーションが上がり、自分の足りない部分を教えてもらえたと感じます。

東大合格を報告する大塚さん(左から2人目)と祝福するむつ市長 宮下宗一郎氏(同4人目)

―首都圏以外の地域から東大を目指すことについて思うことはありますか。

大塚 私は大学でラクロス部に所属しているのですが、首都圏以外の地域から東大を目指すこととラクロス部の活動には、どこか重なる部分があるなと感じています。私が所属している東大ラクロス部は、全体で4部あるリーグの2部リーグにいるのですが、その中で1部リーグを目指して頑張っています。しかし、1部校に比べたら部員数も少なく、実力をつけるための環境も整えにくいのが現状です。また、それ以外にしなければならないことも多く、上を目指すことだけに集中するのは難しいと感じています。一方、1部リーグで上位を争っているチームは、そこにいるのが当たり前という環境で、日々戦っています。

そういった状況が、首都圏以外の地域から東大を受験することに似ているなと思います。1部リーグのチームは、常に上にいるというマインドをもち、成長するための方法論や環境も整っていて、最短距離で上達しているんじゃないかと感じています。ですが、東大ラクロス部は、いろいろと回り道をしながら、少しずつ上手くなっている。環境が大きく異なる中で、高い目標を目指している今の東大ラクロス部の状況は、首都圏以外の地域から東大を目指す受験生に重ね合わせられますね。

私自身、高校1年生の頃に先生に言われなければ、どの程度勉強すれば東大に合格できるかといったイメージすらまったくもてませんでした。だからこそ、まわりの人から声をかけてもらえる環境は大切だと思います。本格的に受験が近づく前に、芽が出そうな人を早く見つけてあげることも大事かもしれません。ある程度勉強ができる人だったら、自分の能力を試したいと思う気持ちは皆がもっていると思うので、それを後押ししてあげてほしいです。

東大ラクロス部でも活躍している大塚さん(写真中央)

―ご自身の今後はどのように考えていますか。

大塚 現在は前期過程教養学部でいろいろな科目を幅広く学べますが、1年生のときはほとんど理系科目を履修していたので、2年生では文系科目にも手を広げて履修したいと考えています。進学選択では入学当初と変わらず農学部獣医学科を志望するつもりですが、具体的な将来の進路はまだ決めていません。臨床や家畜、研究など、獣医といってもいろいろな選択肢があるので、学部の勉強をする中で興味のあることにどんどん挑戦していきたいです。今一番力を入れているのはラクロス部の活動なので、それも引き続き頑張っていきたいですね。

また、これまでたくさんお世話になったので、将来的にむつ市に何らかの還元ができたらいいなと思っています。なにより私はむつ市が好きです。小6の時にむつ市に引っ越してきましたが、むつ市で育ったという思いが自分の中に強くあります。あなたの出身地は?と聞かれれば、むつ市と答えたい気持ちです。むつ市からたくさん応援してもらって今こうして大学に通っているので、これからも勉強を頑張って自分の思う進路をしっかりと歩んでいきたいと思います。

―東大を目指す受験生へメッセージをお願いします。

大塚 もし部活など勉強以外にも頑張りたいことがあるなら、まずはそれを一生懸命頑張ってほしいです。私は高校時代、最後まで部活を頑張っていました。勉強との両立が大変で部活を辞めようか迷うこともありましたが、まわりの応援もあり、最後までやりきって満足して受験に向かうことができました。その経験が自分の中ですごく大きかったと思います。とはいえ、勉強をおろそかにするのではなく、できることから取り組み、基本をしっかりマスターしておいてください。コツコツ問題集を進めたり、テストや模試の結果と向き合って復習したりすることはとても大切です。本格的に受験勉強を始めるときにそれが生きてくると思います。

私が東大を目指したのには、「挑戦」の意味がありました。学校で一番でも、県外に出るともっとすごい人がたくさんいるのが現実です。でも、地域の中にとどまっているとそれが見えません。自分の限界はどこなのか、自分はどこまでいけるのか、ということが知りたかったんです。首都圏以外の地域から東大を受験するには「覚悟」も必要ですが、「覚悟」をもって受験に臨むことで勉強以外の部分で成長できるところもあると思います。まわりのサポートは必要だと思いますが、東大を目指すのは不可能なことではありません。努力次第できっと叶います。私と同じように、首都圏以外の地域出身でも東大を目指し、一緒に東大に通う人が増えていくことを願っています。