京大英語を考える(2016年度入試)

京都大学の英語では、主に英文和訳と和文英訳を用いて、高度な思考力・記述力を問う問題が伝統的に出題されてきました。2016年度入試においても、そのような「京大らしさ」は維持されていますが、長文読解と英作文両者において新傾向の問題が出題され、注目を集めました。

2016年度入試概要

大問数が例年の3問(Ⅰ…長文読解、Ⅱ…長文読解、Ⅲ…和文英訳)から、下記にある通り4問へと変更されました。これまではⅢで和文英訳が2題出題されていたのが、和文英訳と条件英作文で別の大問に分けられたためです。全体の分量的には昨年から大きな変化はありません。

大問 出題形式 小問 内容・文章テーマ
長文読解 (1)下線部和訳
(2)内容説明
「アメリカの宗教の二面性」(645語)
長文読解 (1)適語補充
(2)下線部和訳
(3)下線部和訳
「記憶とは何か」(378語)
和文英訳 「パン作りについて」
条件英作文 (1)会話文補充
(2)会話文補充
「積ん読について」
大問Ⅰ
従来の和訳問題に加えて、(2)で内容説明問題が出題されました。この問題は、文章全体の主旨を踏まえて自分の言葉でまとめる必要があり、多くの受験生が苦労したようです。
大問Ⅱ
下線部和訳では、語彙や文法の基礎力をもとに、文脈を踏まえた丁寧な訳出が求められます。学術的な文章を用いた京大らしい出題だと言えるでしょう。
大問Ⅲ
日本語特有の表現に引きずられずに、いかに英語として伝わるように書けるかがポイントとなります。英作文においては、読解で求められるような抽象度の高い用語よりも、日常生活で用いられるような語彙の知識が問われるのも特徴です。
大問Ⅳ
大問Ⅲの和文英訳問題が従来の2題から1題になったのに伴って、新しく条件英作文が出題されました。2人の会話の一部が空欄となっており、自然な応答となるように英文を埋める問題で、過去に東大でも出題されたことのある形式です。2015年度の会話形式の和文英訳を発展させ、よりコミュニケーションの場を想定した出題になったと言えます。

新傾向問題の分析(大問Ⅰ(2) 内容説明問題)

大問ⅠとⅡの長文読解では、伝統的に下線部和訳問題が中心でしたが、60〜80字×2という分量の多い内容説明問題が出題されました。

この問題では、「我々(アメリカ人)は歴史を the margins よりも the middle から学んできたが、実際に我々の文化の多くを形成してきたのは the margins の方なのだ」という趣旨の文に下線が引かれており、この中の “the middle” と “the margins” が具体的にどのようなことを指しているのかが問われました。

模範解答は以下のようになります。

解答例

the middle:カトリック君主国であるスペインの命を受け、その援助のもと新大陸を発見したコロンブスから始まる、アメリカ合衆国を支配してきたキリスト教世界。(70字)

the margins:新大陸発見時のコロンブスの船団の乗組員の中にも見られた、キリスト教社会から何らかの形で絶えず排除されてきたキリスト教以外の異教徒の世界。(68字)

解答のポイント
① 設問文で言及されている「新大陸発見の事例」に終始するのではなく、本文全体を貫く「アメリカ社会の中心をなすとみなされてきたキリスト教的世界」と「(実際は重要な役割を果たしながらも)注意を向けられることのなかった非キリスト教社会」の対比を意識して答える。
② 特定の箇所を抜き出して訳すのではなく、本文全体の主旨を踏まえたうえで自分の言葉でまとめる。

実は、類似の内容説明問題は2015年度にも出題されていましたが、直前の2文の内容を制限字数(30〜50字)にまとめればほぼ正答となるような問題でした。それに対し、この問題は、「解答のポイント」に挙げたように、全体の内容を考慮した解答が求められるという点で、格段に難易度が上がりました。

長文読解の対策

京大でこれまで伝統的に出題されてきた和訳問題においても、下線部だけに着目するのではなく、前後の流れを踏まえた訳出が求められてきましたが、2016年度の内容説明問題では、本文全体の内容理解がこれまでにも増して求められるようになりました。英文を読む際に、語彙や構文、文法等の知識はもちろん不可欠ですが、それだけでは東大・京大をはじめとした難関大の長文問題には太刀打ちできません。「筆者が文章全体で何を言おうとしているのか」を意識して、俯瞰的な視点で文章を読むことを日頃から心がけましょう。