京都大学大学院 経済学研究科 諸富徹 教授

京都大学大学院 経済学研究科 諸富 徹(もろとみ とおる)教授

京都大学大学院 経済学研究科
諸富 徹(もろとみ とおる)教授

1998年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。主著に、「環境税の理論と実際」(有斐閣)、「私たちはなぜ税金をおさめるのか – 租税の経済思想史」(新潮選書)など。これまでに、内閣府「政府税制調査会」、飯田市「再生可能エネルギー導入支援審査会」等の委員を務める。

世界的に高まる再エネの導入
原発に変わる基幹電源になるか?

いっぽう、ここ5年間で諸富教授が力を入れている研究テーマが再生可能エネルギー(以下、再エネ)の可能性である。日本では2011年東日本大震災で原子力発電所(以下、原発)が大事故を起こして以来、再エネに対する期待が高まっている。原発1基は大きいもので約120万キロワット前後の出力を持つが、これを再エネに置き換えるとなると、かなりの規模が必要になる。

「経済学者としては、発電コストが安く、二酸化炭素も出さない原発にある程度依存するのは致し方ないと考えていました。しかし、福島での衝撃的な事故を受けて、再エネを効率的に活用することにより原発を段階的に減らす道が可能ではないかと考えるようになりました。

再エネの問題はコストです。しかし、高くつくのは未来永劫ではありません。再エネのなかでも太陽光はとくにコストがかかるイメージがありますが、いまは次第に安くなってきていて、これから更に下がっていくと予測されます。いっぽうで、福島第一原発事故以降の原発は時間とともに右肩上がりになることが予測されています。2050年を見据えれば、再エネを重要視して基幹電源化することが日本経済においてプラスになるといえます」

主な再エネとして太陽光や風力、水力、地熱等が挙げられるが、すでに風力発電は既存エネルギーに比べ発電コストの安さが実証されたという。欧州では風力発電の大量導入を進める国々が目立っており、今現在総発電量に占める割合はデンマークが約6割、ドイツは約4割。それぞれの国の経済状況も順調だ。

「現在、福島県・新潟県・福井県に集中している電力システム(集中型電力システム)を分散型電力システムに切り替える必要があります。実際のところ、分散型電力システムは経済的に割に合わないし、十分な電力を賄えるほどの発電量を得るのは難しいです。しかし、これから転換点が訪れようとしています。再エネのコストが下回り、技術的にも進歩して発電量を担保できるようになるのです。今や、世界規模で再エネへ向かう流れが勢いを増しています。再エネはとって代わることができる。これは紛れもない事実です」

諸富教授は今後の研究課題を次のように話す。

「日本の場合、化石燃料を使う火力発電に依存しており、現状は火力発電の比率が8割を超えています。火力発電は発電時に二酸化炭素が発生するため環境にも負荷がかかります。原発を再エネに置き換えるというシナリオがありますが、残り8割ある火力発電も減らしていくことを考えると現状再エネは極めて少ないといえます。多様な発電方法をバランス良く組み合わせたエネルギーミックスで安定的に電気を供給できる仕組みが必要です。国策では相変わらず原発を推す声が強いため、再エネを主軸にした発電方法が経済的にも有用であることを示すのが今後の課題になるでしょう」

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