東大英語の特徴と傾向分析・学習アドバイス

Ⅱ 学習アドバイス

  1. 東大入試が求める英語力
  2. 「読む」力 —— 読解について
  3. 「聴く」力 —— リスニングについて
  4. 「書く」力 —— 英作文について

東大入試が求める英語力

東京大学発表の「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」のなかで、東大が育成を使命とする市民的エリートとしての責任を現代社会において果たすためには、

1)英語による受信力
2)英語による発信力
3)批判的な思考力

の3つの力が必要だと述べられています。

つまり、想像力豊かな批判的視点を常に持ちつつ、相手側の英語による発信を正確に受信・理解し、それをうけて自らの考えや述べたいことを正確に相手へ発信する、という一見当たり前にも思えるプロセスを着実に踏むことができるか、そうしたまさに基本が問われているのです。

「読む」力 —— 読解について

まずは語彙や表現、文法、英文の論理展開についての知識など基礎を確実に固めることが重要です。東大の英語問題は、先にも述べたようにその大半が基本事項の組み合わせにより解答を導き出すことができるように作成されています。

東大志望者のなかにはこうした「基礎が最重要」という事実を忘れて、応用的な事項ばかりに手を出そうとする人も見受けられます。自分自身を謙虚に見つめ直し、わかった気になっているだけではないか、その知識を他人に正確に伝えたり、自由自在に使いこなしたりできるか、といった批判的な姿勢を常にもって学習を進めていくことが極めて重要です。そうした基礎を盤石にしたうえで問題演習などを通して多様なジャンルの文章にふれていきましょう。

「聴く」力 —— リスニングについて

英語による受信力として「読む」力と同様に重要であるのが「聴く」力です。近年の大学入試の動向としても、英語による「コミュニケーション」が重視されており、今後リスニングの重要性はさらに高まっていくと考えられます。実際、東大英語においてもリスニングの配点は全体の約4分の1を占め、得意・不得意により点差が大きく開きやすい一方、しっかりと対策を行えば十分に得点源となる分野です。

東大が出題するリスニングの特徴は、扱われるテーマが単なる日常会話ではなく、英語による討論・議論が中心である点です。初歩的な学習の段階では、簡単な英会話を素材に英語の音に慣れるようにし、より実戦的な学習の段階では、論説文など抽象的なテーマを扱った文章を素材として聴き取りやディクテーション、音読などを行うことでアカデミックな内容に関するリスニングへの対策を怠らないようにしましょう。英語のニュース番組やドキュメンタリーなどを利用して学習するのも有効な一手です。

「書く」力 —— 英作文について

英語による発信力は「書く」「話す」の2つに大別されますが、ここでは主に「書く」力、すなわち英作文について述べます。

英作文の出題形式は近年流動的ですが、文法・語法等の基本知識の確実な運用が求められている点は変わりません。論理的で意味の通る文章を書くことはもちろんですが、制限語数が少ないこともあり本格的なエッセイを書くという類の設問ではありません。よって内容面でのレベルアップはさることながら、文章を書く大前提として、語彙や表現、文法・語法事項が正しく運用できているか、ケアレスミスはないか、ということを日ごろから強く意識していくことが肝要です。日々の学習では自由英作文で使うことをイメージしながら英語表現を着実にストックして、自由に使いこなせる表現の幅を広げていきましょう。

最後に「話す」力、つまりスピーキングについて付言します。東京大学によれば、スピーキングの試験を実施しないのは技術的な理由等によるものであり、大学が「話す」力までも念頭に置いた英語力を求めていると考えてよいでしょう。実際、2013・2014年度の英作文では、2人の登場人物の会話を自由に創作する設問が出題されましたが、これはスピーキングの能力を英作文の形を借りて間接的に問うたものと考えられます。このことからも、英語による発信力は今後ますます重視されていくと予想されます。