第3部 現役合格アドバイス〈英語編〉(2016年度「東大を語る」イベントレポート)

2016年7月16日()および9月3日()に、代々木ゼミナール・Y‐SAPIX共催セミナー「東大を語る」を開催しました。

第1部では、東大の教育システムに着眼してお話ししました。入学後の学びやカリキュラム概要のみならず、そこから東大を貫く精神を分析することにより、入試の担う役割について考えました。第2部では、入試に焦点を当て、今年度の入試概況から合格に必要な学力を検討し、今後の学習指針を示しました。第3部では、さらに志願者全員に関わる英語科に的を絞り、入試問題の特徴や次年度入試へ向けた効果的な学習方法を提案しました。

文科・理科で唯一の共通科目である英語に絞ってお話をします。

第1部でもお話ししたとおり、入試英語の結果は入学後の外国語学習にも影響します。合否判定に関わるだけでなく、英語単体でどれだけ得点できるかということが重要なポイントです。

東大英語を考える

2016年度入試概要

東大英語は、ボリューム・バリエーションともに富んでおり、他の国公立大学と比べても一線を画する問題です。

2016年度入試の問題の配列は表のとおりでした。

出題形式 内容・文章テーマ
大問1 (A)大意要約
(B)段落補充
「人間社会に結束性を生む要因と帰結」(約320語)
「言論の自由はなぜ不可欠か」(約810語)
大問2 自由英作文
(A)60〜80語
(B)50〜70語
★(B)は新傾向
「画像(猫をつまもうとする人の手)をみて思うことは」
「『動物の知能』に関する話から導かれる結論は」
大問3 リスニング
(A)(B)(C)
(A)「ピカソの絵画の価値」(ラジオ番組/約440語)
(B)「美術作品の価値について」(議論/約710語)
(C)「蚊に刺されやすい人の特徴」(講義/約450語)
大問4 (A)正誤判定
(B)英文和訳
「現代社会における知識の意義」(約460語)
「アフガニスタンの戦争報道について」(約230語)
大問5 長文総合 「社会的排除に苦しむホームレスの人々」(約870語)
大問1
最初の小問は大意要約問題です。東大では、何十年にもわたって、冒頭に要約問題が出題されています。したがって要約対策は必須です。続く小問は、段落補充問題です。虫食いになった文章に相応しい段落を選択肢から選ぶ問題です。
大問2

自由英作文パートです。Aは、画像の状況について英語を用いて説明させる問題でした。出題されたのは遠近法を用いて撮影された写真です。遠くに寝そべっている猫が、あたかも撮影者につままれているように見えるものでした。

Bは、一つのテーマについて述べられた文章の結論を記述させる問題です。与えられた文章について、読み取りできなくては英作文がかけません。その上、論理的帰結としての答えを記述しなくてはならないため、解答に制約があります。結論が思い浮かばなくては、解答不能に陥ってしまうような出題です。リーディングとライティングを兼ねた融合問題ともいえます。

大問3
リスニング問題です。試験時間を二分するように、ちょうど真ん中に約30分間の音声が流れます。年度によって、若干速さが異なるとの報告もありますが、基本的に読み上げるスピードが速いのが特徴です。
大問4
リーディングがメインのオーソドックスな問題です。読解力が要となります。
大問5
長文総合問題としてエッセイないしは小説文が出題されます。

以上の形式で、総ページ数27ページ、試験時間120分です。そのうち30分はリスニングに割かれるため、かなりスピーディに取り組まなくては厳しい試験であるといえます。時間的な制約があるうえ、多様な問題形式であるため、次年度以降もハードな試験になることは想像に難くありません。

東大が求める英語力とは

東大英語が求めるのは、①「何が」述べられていて ②「何を」言いたいのか、③それを端的に日本語・英語で制限時間内にまとめあげる力(=要約力・瞬発的な思考力)です。

以上のことから、対策を3点にまとめます。下記を重点的に鍛えることで、仮に新傾向問題がでたとしても適切に処理をすることができるはずです。

1. 圧倒的な処理スピード
瞬発的な思考力がなくては、高得点を狙うのが難しい試験です。
2. 段落間関係を把握する力

段落の相互関係が読めるか否かを測る問題が増加傾向にあります。

パラグラフ・リーディングの活用は、東大英語の特徴でもある分量に対応するためにも必須となります。

3. 英語・日本語の文章表現力
記述式の割合が多くを占めます。英語・日本語問わず高い文章表現力を要します。