第2部 現役合格アドバイス〈全体編〉(2016年度「東大を語る」イベントレポート)

東大の採点は「対話式」である

入試担当理事・南風原副学長は「東大入試の採点は対話式である」とおっしゃいます。

東大では毎年約1万人の答案を何度も見直しながら、丁寧に採点をしています。

まず複数の採点者で手分けして、一通り採点を行います。すると、評価するにあたっての問題点や思いがけない解答から新たな課題が生じます。これらを協議し、もう一度採点をし直します。この作業を何度も繰り返しているそうです。

シンプルな設問は東大入試の特徴の一つですが、実は答えが定まらない奥深い出題です。一見簡素な問いが、受験生たちから多様な解答を引き出します。

東大はこれに応えるように、答案用紙を介して生徒一人ひとりを評価します。これまで培ってきた学力だけでなく、生徒のポテンシャルを見落とさないよう、歩み寄りながら採点をしているのです。

受験生のみなさんも、答案を通じて採点官(教官)と“対話”をするような意識で臨んでください。記述・論述まで充実した答案作成を心掛けましょう。

東大入試の採点イメージ

再現答案から学ぶこと

SAPIX YOZEMI GROUPでは、実際に2016年度入試を受験した生徒から再現答案を集め、講師による分析を行いました。各教科から挙げられた答案作成の主な問題点は次のとおりです。

国語
(現代文)
・設問の指示を十分に満たしていない
・踏み込んで主体的に説明しようとする意欲に欠けている など
世界史 ・問題文の読解力不足
・文章力不足 など
地理 ・問われている内容を論理的に説明できていない
・要旨を簡潔にまとめられていない など
数学 ・適切な解法の選択ができていない
・記述力が不十分 など
化学
・選択肢を選べても、その理由を説明できない など
物理
・問われている内容を論理的に説明できていない
・要旨を簡潔にまとめられていない など

こうした問題が生ずるのは、「大学の先生が求めていることを理解できていない」ことに起因します。すなわち、答案を通して、コミュニケーションができているかいないかが得点力を分けるということです。知識の有無のみならず、採点官に伝えるための答案作成をしっかりと練習してください。